米主導の環太平洋演習、今月末に開始 クアッド含め26カ国参加
ソウル(CNN) 米海軍第3艦隊は5日までに、26カ国が参加する世界最大規模の多国間の海上演習「環太平洋合同演習(リムパック)」を今月29日から8月4日までの日程でハワイ・ホノルルやカリフォルニア州の周辺海域で実施すると発表した。
声明によると、水上艦38隻、潜水艦4隻に航空機170機が参加。9カ国の地上部隊を含む兵士ら約2万5000人が加わる。同演習は1971年から始まり、今年は28回目。
米海軍によると、演習では水陸両用作戦、砲撃、ミサイル発射、対潜や防空能力に取り組むほか、機雷除去、爆発物処理、潜水や救助任務なども盛り込まれている。
米国は近年、中国が領有権論争が長引く南シナ海で軍事進出を強める中、自由で開かれたインド太平洋の実現を標榜(ひょうぼう)。今年の演習には同海に面する東南アジアの2カ国、中国との主権論争に直接巻き込まれている同地域の3カ国も参加する。
南シナ海で諸島などの領有権を争うのはフィリピン、マレーシアにブルネイで、インドネシアは領海と中国が主権を主張する海域の線引きなどで対立し、シンガポールは同海への南西部の入り口に位置している。
自由で開かれたインド太平洋の実現を唱える枠組みの「クアッド」を構成する日米、オーストラリアやインドも演習に参加する。この4カ国は中国を意識した軍事協力を深めており、2020年以降、共同の海軍演習を2回実施した。4カ国首脳の会談は昨年以来、4回となり、直近では今年5月24日に東京で開いていた。
中国はクアッドをアジア版の北大西洋条約機構(NATO)と切り捨て、冷戦思考を維持し地政学的な対立関係を再燃させる狙いがあると反発している。
今年のリムパックにはこのほか、カナダ、チリ、コロンビア、デンマーク、エクアドル、フランス、ドイツ、イスラエル、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ペルー、韓国、スリランカ、タイ、トンガに英国も人員などを派遣する。
米海軍情報収集部門の元幹部はリムパックの参加国数に触れ、軍事的な側面での重みのほか、米国が世界規模で担う政治的な影響力も象徴していると指摘した。
また、今回の演習については特に南太平洋の島嶼(とうしょ)国であるトンガが含まれていることに注目した。中国が南太平洋の島国で影響力の拡大を試みている最中での参加となっている。