ウクライナでの戦争、長期的結果を左右する重大局面に到達 西側当局者
ワシントン(CNN) ウクライナ軍が旧式装備に適合するソ連時代の弾薬を使い尽す中、同国は西側諸国に重火器の追加投入を要請している。その間にも東部の2つの戦略的要衝では、ロシアが砲撃で極めて有利な状況を築いている。
米国や西側の諜報(ちょうほう)事情に詳しい複数の情報筋によれば、西側の情報機関および軍の関係者は、ウクライナでの戦争が長期的な結果を左右する重大局面を迎えていると考えている。
この転換点となる場面は、西側諸国にも厳しい決断を強いることになるかもしれない。これまでウクライナを支援してきた各国では、国内経済や武器備蓄に対する負担が着々と増加している状況だ。
米国防総省の高官によれば、ロイド・オースティン国防長官は15日に約50カ国から成る作業グループを率いて今回の危機を話し合うことになっている。そこでは、ウクライナ向けの追加軍事支援も発表される見込みだ。だがウクライナの当局者は、戦闘に必要な弾薬の供給が少しずつ、断続的に行われている状況に見えると不満を募らせている――決定的な場面で西側の態度が軟化するのではないかという懸念も持ち上がっている。
「一方か、他方か、いずれかが成功を収めるという段階に差しかかっているようだ」と、北大西洋条約機構(NATO)の高官は言った。「ロシアがスラビャンスクとクラマトルスクに到達するか、あるいはここでウクライナがロシアを食い止めるか。これだけの軍勢を前にウクライナが持ちこえられれば、大きな意味をもつだろう」
フォンデアライエン欧州委員長との共同声明を出すウクライナのゼレンスキー大統領=11日/Valentyn Ogirenko/Reuters/File
想定される3つのシナリオ
西側関係者は、今後展開が予想される3つのシナリオを注視している。
ひとつは、カギを握る東部2州でロシアがこのまま徐々に進撃を続けるというもの。もうひとつは、前線が激化して膠着(こうちゃく)状態になり、数カ月ないし数年と長引いて双方に膨大な死傷者が出るというもので、ゆっくりと展開する戦争が今後も世界経済の足を引っ張り続けるだろう。
関係者がもっとも可能性が低いと思う3つ目のシナリオは、ロシアが戦争の目標を再定義し、勝利を宣言して戦闘終結を図るのではないかというものだ。情報筋によれば、今のところこの筋書きは希望的観測に過ぎないようだ。
ロシアが東部での戦果の一部を確固たるものにできれば、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がそうした地域をウクライナへのさらなる侵攻の拠点として利用する可能性がある。こうした不安は米国関係者の間で強まりつつある。
「ウクライナの力が十分でなければ、きっとロシアはさらに攻め入ってくるだろう」。ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領は14日、西側に迅速な武器供与を要請する中でこう語った。「我々は相手に自分たちの力を見せつけた。西側諸国も我々とともにこうした力を示すことが重要だ」
ウクライナの支援国がロシアの領土獲得の野望を阻止しようと望むなら、西側の軍事支援は「もっと早く行われるべきだ」とゼレンスキー大統領は述べた。
単純に数で見れば、東部ではロシアの方が優勢だというのが西側関係者の一般的な見方だ。とはいえ、「ロシア側の前進が決まったわけではない」とバイデン政権の高官は述べた。
前線では砲弾が双方から飛び交う消耗戦に突入する中、いずれの側にも甚大な死傷者が出ており、兵力不足に見舞われている可能性がある。ロシア地上軍の損失は3分の1にもおよび、人員を総動員しなければ重大な成果を上げることは難しいだろうと米情報機関の関係者は公言した。ただ、総動員は政治的な危険をはらむ動きとなり、プーチン大統領も今のところ及び腰だ。
現在、戦闘はドネツ川を挟んだ2つの都市、セベロドネツクとリシチャンスクに集中している。ウクライナ兵はセベロドネツクでほぼ完全に包囲されている。
西側専門家の考えでは、高台に位置するリシチャンスクをウクライナが防衛する可能性は高いものの、問題となる兆候も出ている。ロシアが南東から進軍して街の供給ラインを断とうとしているのだ。
ゼレンスキー大統領も先週、「多くの点から、ドンバスの運命は(2つの都市の周辺で)決まりつつある」と発言した。