ウクライナ戦争でエネルギー源移行が加速、大転換とIEA
(CNN) 国際エネルギー機関(IEA)は5日までに、ウクライナに侵攻したロシアの化石燃料の輸出が減少の一途をたどっていることを受け、より持続可能で安定したエネルギー源確保への移行が世界規模で加速する可能性があるとの報告書を公表した。
年次の「世界エネルギー見通し」で指摘したもので、国際エネルギー市場は「大きな方向転換」の最中にあるとの認識も示した。
ロシアから欧州へのエネルギー源の輸出がしぼんだことを受け、多くの国が新たな事態への適応を図っているとし、世界規模の二酸化炭素の排出量は2025年に最高水準に達する可能性があるとも予想した。
また、IEAのエネルギー源需給などに関する予測としては初めて、全ての化石燃料への世界的な需要は2030年代半ばに頭打ちとなる前に、ピークあるいは横ばいの水準に到達する可能性があるともした。
IEAのビロル事務局長は、エネルギー市場や関連政策はロシアのウクライナ侵攻を受け変質したとし、その波及効果は当面の期間の問題ではなく今後数十年にも及ぶと指摘した。
世界エネルギー見通しによると、多くの政府はエネルギー危機に直面し短期的な消費者保護対策だけでなく長期的な展望を踏まえた措置を講じているとも分析。一部政府は原油や天然ガスの調達元の多様化の拡大を図り、多くはエネルギー政策に関する構造的な変化の加速も見据えているとした。
IEAの予測によると、クリーンエネルギーへの世界規模での投資は2030年までに年間で2兆ドル以上に膨らむ可能性がある。現状と比べ50%以上の増加を意味する。
IEAは、化石燃料の最大の輸出国であるロシアが国際的なエネルギー市場での強固な足場を取り戻すことは決してないだろうとも予測した。ウクライナ侵攻に伴って欧州市場との関係が破綻(はたん)し、エネルギー市場での大きな地位低下にさらされることになったと断じた。
事務局長は3日には、世界や欧州のガス市場でみられる直近の傾向や予想し得る事態の進展を踏まえれば、欧州が来年の冬、ガス調達でより厳しい試練に遭遇する方向にあることが見てとれるとも主張。
欧州の各国政府がさらなるガス不足を回避するために迅速な行動に出る必要があるとし、エネルギー使用の効率向上や再生可能などのエネルギー開発の加速に早急に取り組むことが重要と説いた。ガス需要を構造的に減らす他の措置の導入も訴えた。