バフムートに留まった男性、友人と右腕、生活の糧を失う
ウクライナ・コンスタンチノフカ(CNN) ウクライナ東部の前線にあるヴャチェスラフ・タラソフさんの自宅外の道路には、砲弾による穴が開いている。周囲の建物は大半がもぬけの殻で窓もなく、冷え切っている。
バフムートはこの数カ月間、いら立つロシア軍の容赦のない砲撃にさらされている。ロシア政府はロケット弾やミサイルで建物を跡形もなく破壊。歩兵隊を絶え間なく送り続け、損壊した家屋の間で戦わせている。
48歳のタラソフさんは砲撃から逃れるため、地下での生活を余儀なくされていた。しかし先週、危険を承知で外へ出ることにした。野菜を買ってきて国民食のボルシチを作るためだ。
「何を使ったのかは分からない」「しかしその力はすさまじく、腕が吹っ飛ぶほどだった」と、タラソフさんは振り返る。
この時の爆撃はタラソフさんの体を引き裂き、友人の命を奪った。大量に出血したタラソフさんも死を覚悟したが、何とか生き延びたいと神に祈ったという。
熱心なキリスト教徒のタラソフさんは、「目に見えない力」で命が助かったと信じる一方、ウクライナ軍の兵士にも感謝している。兵士らはタラソフさんをピックアップトラックに乗せ、コンスタンチノフカの病院まで運んだ。そこは戦争による民間人の負傷者を治療できる残り少ない病院の一つだった。
病院に着いたタラソフさんは、まず医師に対し、腕を元通り縫い合わせることは可能かどうか尋ねた。爆発でちぎれたタラソフさんの右腕は、衣服の袖の中でぶら下がった状態だった。裂けた腹からは腸らしき臓器が飛び出し、辺り一面血まみれだったという。