「こうした公約に期待は高まっているが、混乱した状況を収めることができなければ、EU加盟国が一方的に動き、上陸拒否や国境での暴力沙汰など勝手な行動に出るだろう。もっと最悪な事態も考えられる」(ベイレンス所長)
メローニ首相は移民問題に対して非常事態を宣言したばかりだ。これにより普段は自然災害の対応に当たる当局でも移民の即時送還ができるなど、極端に厳しい移民対策が可能になる。
オルシナ氏によれば、首相にとって非常事態宣言は時間稼ぎだという。「イタリアの官僚手続きを省略化し、移民問題に厳重対処しているとのメッセージを国民に広めることができる。イタリアにやってくる移民を適切に統制することもできる」
左派寄りの地域では、こうした対策に対するボイコット運動が起きている。野党勢力の民主党エリー・シュライン党首は、首相による法令をファシスト時代のそれに例えた。
メローニ首相が選挙で大勝したことは、イタリア政治史に残る快挙だった。その理由は、極右少数派からの急速な台頭だけではない。
メローニ氏はイタリア最年少かつ初の女性首相である上に、2011年以来初めて選挙で選ばれた指導者となった。十分な議席数を獲得したため、そうした場合よくあるように、選挙後の政治手腕に注意が払われてこなかった。
だが国民は声を上げ、首相に公約の実現を迫っている。
目下のところ、有権者との約束を首相が守れるかどうかが国民の最大関心事となっている。
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本稿はCNNのバービー・ラッツァ・ナドー記者による分析記事です。