こうした取引が交わされて以来、モスクワ時間の26日夕方時点でプーチン氏は公の場に姿を見せなかった。奇妙なことに、ロシア政府はプーチン氏が青少年フォーラムの協議に出席した際の収録映像を放映した。これは動揺とリーダー不在の現れで、戦時中の指導者にあってはならないことだ。指揮官としての才覚に傷をつけた週末の反乱が、戦場での混乱に発展するには数カ月かかるかもしれないが、そうだとしてもウクライナ側には有利に働くだろう。
最後に、ウクライナの反転攻勢は常にロシアに対し、戦場で難しい選択をするよう迫っている。ウクライナは予備兵を総動員してロシアの防衛線を破るまで、ロシア側の防衛力をすり減らそうとしている。
こうしたことがバフムートで、あるいは長くのびる南部の前線で見られるだろうか。あるいは西部や北部の前線にまで及ぶだろうか。
今回の戦争でプーチン氏が細部まで徹底した管理体制を敷いている事例が報じられていることからも、プーチン氏か、少なくとも非常に高位の軍幹部が、より広い視点で軍の進退に関わっていた可能性が高い。そして今、ロシアはソ連崩壊来の最大規模の内政危機に見舞われている。おそらくこれまで以上に誤った判断が行われることになるだろう。
今こそウクライナは、よそに気を取られているロシア政府に戦略的ミスを犯させ、チャンスを最大限に生かしたいところだ。ウクライナと同盟国が今もなお週末の反乱を精査し、その影響をはっきり見極めるまで動きを控える可能性もある。
果たしてプーチン氏の立場はさらに悪化するだろうか。ウクライナがそうだったように、戦場での激震で、はからずとも政府高官がプーチン氏のもとに結束し、存続の危機を退けようとするだろうか。プーチン氏が「混乱」と呼ぶこの時期、予期せぬ結果に転ぶ危険は十分にある。1917年にロシアが第1次世界大戦から撤退し、1世紀近くにわたって革命軍の影響に包まれた時の亡霊を、プーチン氏は呼び起こした。
敵がミスを犯している時は邪魔するな、とはナポレオンの言葉だ。この数カ月、ロシア政府はあまりにも多くの過ちを犯してきたため、どこかのタイミングでウクライナが主導権を握るだろう。その結果ロシア国内に危機が生じれば、週末の反乱などかわいいものに見えるかもしれない。
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本稿はCNNのニック・ペイトン・ウォルシュ記者の分析記事です。