旗艦をねらえ
ウクライナはこの最新装備でロシアの黒海艦隊も標的にしている。沿岸を威嚇するように航行するロシア艦隊は、激しいミサイルの嵐に何度もさらされている。
最近の攻撃でロシアの重要インフラのひとつがドローン攻撃で損傷したが、攻撃はそれ以前からたびたび行われ、ロシア軍に存在を知らしめていた。
昨年10月には、セバストポリ港に停泊していたロシア軍黒海艦隊の旗艦「アドミラル・マカロフ」を水上ドローンが攻撃した。ウクライナ国防の情報筋はCNNに対し、攻撃を実行したのはウクライナ保安局(SBU)だと述べた。
旗艦が負った損害について確かな証拠は一切なく、アドミラル・マカロフは後日とくに大きな損傷もなく再び姿を見せた。だがドローンが船の攻撃範囲内に入り込めたという事実で、ウクライナ軍の成功率の高さがあらためて浮き彫りになった。
2022年4月にウクライナ軍によりミサイル巡洋艦「モスクワ」が沈没した後、代わって配備されたのがアドミラル・マカロフだっただけに、今回の大胆不敵な攻撃はウクライナ軍の士気を高め、世間へのプロパガンダにもなった。
先の兵士「シャーク」は、コントロールパネルからゆったり水上ドローンを操作しながらこう言った。「このドローンは船や艦隊を破壊する目的で作られている。かなり成功を収め、ロシア軍を恐れおののかせている」
アドミラル・マカロフの被害のほどは明らかでないものの、ウクライナ政府の意図は明白だった。
ロシア海軍の標的を攻撃したことで、ロシアは黒海沿岸から遠ざかることを余儀なくされ、ウクライナ内陸奥地へのミサイル攻撃がより困難になっていると開発者は主張する。「300、400、600キロメートルという長距離では、実行不可能な作戦や困難な作戦が出てくる」
それによってオデーサのような都市が「より安全に」なると開発者は言う。だがケルチ橋の攻撃後、オデーサは連日にわたってロシのア黒海艦隊から発射されるドローンや巡航ミサイルの激しい空爆を受けている。ユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界遺産のうち25カ所が攻撃を受けた。ロシアは水上ドローンを隠している地域をねらっていると主張している。
ドローンの攻撃能力と成功事例により、開発者の物言いもいくぶん威勢が良くなった。
「(ロシアが)この手の装備に効果的に対処できるようになるには、あと5年、10年、いやそれ以上かかるだろう」と開発者は言った。「むこうは20世紀の設備、こっちは21世紀だ。あちらとこちらでは100年の開きがある」