リビア洪水の死者、大半は「避けられた」と国連 警報や避難措置機能せず
(CNN) 暴風雨の影響でダムが決壊し、大規模な洪水に見舞われたリビアの状況について、国連は14日、警報などが常時作動する状態であれば死者の大半は被害を「避けられた」との見解を示した。現在救助隊員らは瓦礫(がれき)と国内の政治的分断に阻まれ、重要な人道支援の供給に苦慮している。
国際NGO「国境なき医師団」は14日、リビアでの洪水の死者を少なくとも5000人と発表。当初の推計の8000人から下方修正した。さらに数千人が行方不明となっている恐れがある。北部沿岸の街デルナでは、高さ7メートルの波が押し寄せ、建物全体が「押し流された」。赤十字国際委員会(ICRC)が明らかにした。
国連世界気象機関(WMO)のペッテリ・ターラス事務局長は14日、ジュネーブで記者会見し「もし普通に稼働する気象サービスが存在していたら警報が発せられ、緊急措置を講じて人々の避難を実施できていただろう。人的被害の大部分は回避することが可能だったはずだ」と指摘。「当然、経済的損失を完全に回避するのは無理だが、適切なサービスが運用されていれば、そうした損失も最小限に抑えられた」と付け加えた。
ターラス氏によれば、WMOはかねてリビアの当局者との連携を図り、そうした仕組みの改善を目指してきた。しかし「国内の治安状況が非常に困難なため、現地に行くことも難しい」と同氏は訴える。
リビアは2014年に勃発した内戦以降、政治的混乱によって引き裂かれた。現在は東部の議会から支持を受けてベンガジに拠点を置く政府と、国際社会が承認するトリポリの政府とが対立する状態になっている。
両政府は壊滅的な洪水の被害について、相反する犠牲者数をそれぞれ報告している。CNNはこれらの死者、行方不明者の数を独自に確認できていない。
ICRCリビア派遣団の代表は、デルナの住民がこの規模の被害から復旧するには「何カ月、もしかすると何年も」かかるとの見通しを示した。