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ドニプロ川を巡るウクライナの戦い、その内側に迫る CNN EXCLUSIVE

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CNNが入手したドニプロ川のドローン映像/CNN

CNNが入手したドニプロ川のドローン映像/CNN

ウクライナ・キーウ(CNN) セルヒ・オスタペンコ氏(32)が深夜に小型トラックの車内にしゃがみ込み、樹の陰に身を隠していると、周囲にロシアの爆撃の轟音(ごうおん)が鳴り響いた。

「敵は1日24時間ひっきりなしに砲撃してくる。最後に静寂が1時間以上続いたのがいつだったか、思い出せない」。ドローン(無人機)操縦士のオスタペンコ氏はウクライナ南部を流れるドニプロ川の右岸(西岸)でそう語った。この場所は2度目の冬を迎える消耗戦の新たな前線となっている。

オスタペンコ氏は「雷の子ら」と呼ばれるドローン部隊の一員。ドニプロ川渡河作戦の一端を担い、ロシア軍を後退させて左岸に恒久拠点を築く取り組みを進めている。ウクライナは今月、左岸に「橋頭堡(ほ)を確保した」と発表しており、これまで精彩を欠いていた反転攻勢が大きく前進する可能性が出ている。

ただ、CNNによるオスタペンコ氏の単独取材の間、夜間作戦が中断に追い込まれる場面もあった。右岸にある陣地がロシア軍に特定され、避難を余儀なくされたためだ。

「また攻撃だ。ロケット弾だと思う」。再び轟音が鳴り響くなか、オスタペンコ氏が語った。その顔はぼんやりとした赤色光に照らされている。「この地域に入るたびに死を覚悟する。ロケット弾や砲弾が命中して、いつ人生が終わってもおかしくない。慣れてくるが、不快な経験だ」

ドニプロ川を進む

全長2200キロのドニプロ川は欧州第4の長さの河川で、ロシアからベラルーシやウクライナを抜けて黒海に注ぎ込んでいる。

川はヘルソン州のロシア支配地域にある湿地帯を蛇行しながら流れる。ロシア軍は昨年11月、ウクライナ兵によってヘルソン市から追い出され、川の対岸へ撤退を余儀なくされた。

8カ月に及んだ過酷な占領の後の解放とあって、ヘルソン市は勝利の高揚感に包まれ、ウクライナの戦争努力における重要な節目になった。しかし、その後の1年間で緊張が和らぐことはほとんどなく、ヘルソン市と周辺地域は今も対岸のロシア軍による激しい爆撃にさらされている。

CNNが入手したドニプロ川のドローン映像/CNN
CNNが入手したドニプロ川のドローン映像/CNN
ドニプロ川で警戒に当たるウクライナ軍の要員=11月6日/Roman Pilipey/AFP/Getty Images
ドニプロ川で警戒に当たるウクライナ軍の要員=11月6日/Roman Pilipey/AFP/Getty Images

ドニプロ川は川幅が約1.6キロに広がる場所もあり、ロシア軍にとって自然の要害の役を果たす。ウクライナ軍が川を重要目標に位置付けているのは、一つにはそれが理由だ。ウクライナ軍は以前にも渡河作戦を仕掛けているが、対岸に強固な橋頭堡を築いてロシアを後退させることができれば、民間人と敵の火砲の間の距離が広がり、ヘルソン市の防御をさらに強化できる可能性がある。

また少なくとも理論上は、左岸を進軍すれば、2014年に違法併合され占領下にあるクリミア半島への進撃拠点となる可能性もある。

ウクライナ軍は、これまでにロシア軍を川から3~8キロ後退させたと主張している。

「いま我々(の部隊)はドニプロ川の対岸を前進している。非常に困難な状況であり、進軍を可能にして対岸の戦力を増強すべく手を尽くしている」(オスタペンコ氏)

オスタペンコ氏によると、川を渡る「一定の接続」が確立され、ウクライナ軍は対岸にいる友軍に「兵器や弾薬、食料、燃料」を運べるようになったという。

同氏の航空偵察部隊はこれと並行して、川を渡る兵士の援護や、ロシアの部隊や動きの監視、ウクライナ兵や装備品の位置の隠蔽(いんぺい)も担っている。

この作業には危険が伴う。オスタペンコ氏は連日、「シャヘドと思われる自爆ドローンやグラートロケット砲と見られるロケット弾、迫撃砲、戦車」による一斉攻撃にさらされていると話す。

ただ、ロシアの爆撃は良い兆候と見なすこともできる。「敵は総力を挙げて抵抗を試みている。我々の作戦がすべて順調に進んでいることの表れだ。我々が問題を引き起こしているので、彼らは対抗しようとしている」

「生き延びないと」

一方、ヘルソン市内では、昨年の解放の喜びが薄れ、その日その日をしのぐことに専念しているという住民もいる。

「静かだと、砲撃がある時よりも怖さが増す」。インナ・バリオハさん(54)はそう語る。「じっと待ち、ラジオの音量を下げて絶えず耳を澄ましている。そうすれば窓の外の音が聞こえ、砲撃への対応が間に合うから」

ヘルソン市に残るインナ・バリオハさん/CNN
ヘルソン市に残るインナ・バリオハさん/CNN

バリオハさんはヘルソン市に残る住民約7万3000人の一人だ。当初30万人を数えた住民は4分の1以下に減った。バリオハさんは4歳の孫と体の弱い87歳の母親の面倒を見なければならず、「とうの昔に避難しないことを決めた」という。

ただ、戦時下の暮らしには犠牲が伴う。孫が最初に覚えた言葉の一つは「警報」だった。「孫は空襲警報が鳴った時にどう行動すればいいか、ちゃんと分かっている。どこへ行けばいいのかも。窓の外で爆発音が聞こえたら、廊下に設けた小さな避難所に行けばいい」

砲撃がひどくなってきたので、短い散歩に出かけるのはやめ、現在はもっぱら自宅にとどまっている。「いまは子どもの安全を保つため、私の肩に掛かっていることを何でもこなしている」「私たちの主な仕事は生き残ること。占領中もそうだったし、いまもそう。生き延びないと」

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