催涙ガス、ドローン、囚人軍団:ウクライナ兵が前線で見たロシアの猛攻
ウクライナ・マラトクマチカ(CNN) ウクライナと同盟国がこの夏突破を見込んでいた前線は、今ではやがて訪れる厳しい陰欝(いんうつ)な冬を物語っている――ロシア軍が勢いを盛り返し、ウクライナ側の劣勢が続いている。
「軍内部でよく言うように、紙の上ではいい戦略だったが、塹壕(ざんごう)のことを忘れていた」。第15国家親衛隊の指揮官を務めるイーホリは冗談まじりにこう言った。CNNでは安全上の理由からファーストネームのみで呼称することにする。ウクライナ南部オリヒウにある指揮所の奥でイーホリがCNNの取材に応じていると、無線から慌てた声が聞こえてきた。
「重傷だ」と無線士が叫ぶ。ロシアの陣地に近い塹壕で、暖房代わりに使っていた大型のガス燃料タンクがロシア軍のドローン(無人機)に攻撃され、兵士1人が負傷したのだ。
イーホリは受信機をつかみ、「退避開始、退避開始。小型車両で退避せよ……もう移動したか?」
無線の声が応答する。移動手段がないため、退避は不可能。イーホリは苛立ちで顔をしかめた――もどかしい沈黙の中、次の知らせを待つことしかできない。
数分後、無線が再び鳴った。負傷した兵士は「すでに200だ」――死亡を意味する軍の暗号だ。
「手遅れだ」とイーホリは部下に告げた。「急がなくていい。もう助けられない」。48歳のセルゲイという兵士の遺体は、日が暮れて安全になってから回収することになった。
この日戦死したウクライナ兵はセルゲイを含め4人。現地のウクライナ政府関係者によると、この週はこの地域だけで約50人の兵士を失った。