農業従事者の抗議デモ、欧州全域で噴出 その理由は
何に抗議しているのか?
経済政策や規制、環境保護政策への怒りが多くのデモ参加者を団結させている一方、それぞれの国々特有の不満もまた存在する。
EU全域の農業従事者は、エネルギーや肥料、輸送のコストが跳ね上がっていると口をそろえる。とりわけロシアによるウクライナでの戦争が影響を及ぼしているという。これに加え、各国政府はインフレの中で食料品価格の上昇を押さえ込もうとしている。
EU統計局(ユーロスタット)のデータによると、農業従事者らが自分たちの生産した農産物で得る対価は2022年をピークに下がり続けている。同年第3四半期から23年第3四半期までの間に平均で9%近く下落したという。
フランスでは、政府が農業用ディーゼル燃料の税控除の段階的廃止を計画。より大規模なエネルギー転換政策の一環としているが、これも農業従事者の怒りを買う要因となっている。
仏パリの南西を走る幹線道路の料金所をトラクターで塞ぐ農業従事者/Dimitar Dilkoff/AFP via Getty Images
安価な外国産農産物の輸入に対しても、不満の声が噴出。このような農産物は公平な競争に反していると、農業従事者らは訴える。
仏セーヌエマルヌ県の小さな村から来た農業従事者のエマヌエル・マテさんは、CNNの取材に答え、自分たちには途方もない制限がかかっているにもかかわらず、欧州の外から輸入される農産物には同じ規制が適用されていないと指摘した。
東欧の農業従事者を中心に、安価な農産物のウクライナからの輸入に対しては依然として怒りの声が上がる。具体的には穀物や砂糖、食肉などだ。ロシアによる侵攻を考慮し、EUはウクライナ産の農産物に対する輸入制限や関税を停止している。
気候変動は別の形で状況を一段と悪化させる。山火事や干ばつなどの極端な気候現象が農業生産に与える影響は現在高まっている。
怒りはEUが設けた環境目標にも向けられる。英イングランドのランカスター大学で上級講師(経済学)を務めるルノー・フーカール氏は、「欧州グリーンディール」が緊張関係の主要な原因だと指摘する。
「欧州グリーンディール」は、 CO2排出量に応じた課税や殺虫剤の禁止、窒素放出の削減、水と土地の利用制限といった措置の導入を目指す内容。
フーカール氏によれば、農業従事者はグリーンディールの規制を可能な限り先延ばしにしようとしている。
一方の各国政府は、ドイツならトラクターに使用するディーゼル燃料への課税、オランダなら窒素放出に対する課税など、それぞれ重点的に関心を寄せる項目があるという。窒素放出への課税は畜産業に影響を及ぼすとみられる。