中国人乗せた船が転覆、8人死亡 不法移民激増、危険犯して深夜の航海
(CNN) メキシコ南部オアハカ州の沖合で、米国への不法入国を目指す中国人を乗せたボートが転覆し、中国人8人の遺体が海岸に漂着しているのが見つかった。
地元検察の発表によると、女性7人と男性1人の遺体はオアハカ州サンフランシスコデルマールの海岸で3月29日に発見された。
米国を目指す中国人は、監視が厳しい陸路の検問を逃れる目的で、メキシコの沖合を船で航行する危険なルートを選ぶことがある。
オアハカ検察によると、メキシコ人男性が運航するボートは隣国グアテマラに近いチアパス州タパチュラを28日に出港した。中国人男性1人は助かったとしている。ボートを操縦していた男性がどうなったのかは不明。
転覆については連邦捜査当局と連携して捜査を行い、在メキシコ中国大使館の協力で身元の確認を進めている。
メキシコ経由で米国に不法入国する中国人の数はここ数年で激増している。米政府の統計によると、2023年には中国籍の3万7000人以上がメキシコから米国に不法入国して司法当局に見つかった。その前の10年間は平均で年間1500人程度にとどまっていた。
危険な海上ルートを選ぶ理由
22年に海上ルートで米国にたどり着いた中国人女性のアイリス・ワンさん(35)はCNNの取材に対し、深夜にタパチュラを出航後、船が沈没しかけたと振り返った。
航海の危険を十分に認識しないまま船でオアハカまで行くことを選んだのは、バスを使えば途中で警察に見つかる恐れがあると考えたためだった。
「あの数時間は一生忘れられない悪夢だった。あまりに恐ろしかった」とワンさんは言う。
セダン2台ほどの大きさの船には30人以上が詰め込まれ、足を組んだ姿勢のまま身動きできない状態だったという。
出港後間もなく、船は暗闇の中で激しい暴風雨に遭遇した。
「みんな恐怖で震えていた。ものすごく高い波で、何度も宙に跳ね飛ばされ、全員が絡まり合って、船底に激しくたたき付けられた。もう少し高かったら、きっと船から投げ出されていた」とワンさんは回想する。「私は震えて泣き続け、心の中で『こんな死に方はしたくない』とつぶやいていた」
自分が生き延びられたことをとてつもなく幸運に感じるとワンさんは言い、「夜の海はもう二度と見たくない」と語った。
不法移民の激増は、故国を脱出したい衝動に駆られる中国人が増えている現実を物語る。脱出者の多くは中国での生活が苦しくなったと訴えている。
3年間に及んだコロナ禍では、都市封鎖や移動制限のために中国全土で失職者が増え、習近平(シーチンピン)国家主席の下で生活の全局面に及ぶ中国共産党の厳格な統制が強まったことに対する幻滅が広がった。