ウクライナのAI搭載型ドローン、ロシアのエネルギー産業を標的に
(CNN) 振動音を大きく響かせながら、空中から小さなシルエットが接近してくる。振動音はウクライナを攻撃するロシア軍のドローン(無人機)と気味が悪いほど似通っているが、現場はキーウよりもモスクワに近い。
「こっちに向かって飛んでくる」。女性がロシア語でそう話すのが聞こえる。ソーシャルメディアで共有され、CNNが確認した動画に収録された一場面だ。物体がさらに近づいて、はっきりした。これはウクライナ軍のドローンで、飛行しているのはロシア領土の上空だ。女性の口から恐怖を訴える言葉が飛び出す。
この直後の様子を捉えた別の動画には、空襲警報が鳴り響く中を左旋回するドローンが映っている。数秒後、急降下するドローンがロシアの石油精製所のタワーに激突。パイプに覆われたタワーは衝撃で爆発した。
CNNは動画の撮影地点をリャザンにあるロシア石油大手ロスネフチの石油精製所と特定。ロシアでも最大規模のこの施設は、ウクライナから500キロ離れている。この攻撃は3月13日に行われた。これまで同施設だけでも複数回の攻撃が仕掛けられている。この他にもウクライナ軍は組織的な取り組みによって、ロシアの石油精製所を標的とした長距離ドローン攻撃を実施している。
見たところ攻撃には容赦がない。4月2日にはニジネカムスク石油精製所(ロシア国内の五大製油所の一つ)をウクライナ軍のドローン1機が攻撃した。タタールスタン共和国にあるこの施設は、ウクライナとの国境から1100キロ以上離れている。ロシア当局によれば、攻撃で少なくとも12人が負傷。初期の精製を行う区画で火災が発生した。
作戦について把握するウクライナの情報筋1人はCNNの取材に答え、2日の攻撃が「ロシア領土に最も奥深く入り込んで展開した作戦の一つ」だったと明かした。
こうしたウクライナ軍の大胆な攻撃は、ロシアの巨大な石油・天然ガス産業に打撃を与えている。西側の制裁措置にもかかわらず、これらの産業はロシア政府の戦争経済を支える最大の収入源であり続けている。