自宅も学校もオフィスもがれきに、ハンユニス帰還の住民が見た惨状 ガザ
どこもかしこも壊滅
埃(ほこり)まみれのじゅうたんの上で大きなクッションに寄りかかっていた12歳のアセエルさんは、かつて自分の家だったというがれきの山を指さして言った。
「あそこにあったの。破壊されてしまった」
「私たちの家はなくなった。家具はいくつか持ち出せたけれど、家からは小さな物しか回収できなかった。自分の服を持ち出したかったのに」
木片を運んでいた若い男性のタマルさんは、「これを売れば10~20シェケル(約410~820円)になる。そうすればもう物乞いをせずに済む」と説明した。
最初に戻った時は自分の家が分からなかったとタマルさんは話す。「自分が住んでいた地区でなければ、あれが自分の家だとは分からなかった。どこもかしこも壊滅だ」
映像がとらえた住宅やオフィス、モスク(イスラム教礼拝所)などの大部分は損傷が激しく、全壊した建物も多かった。
ガザのヨーロッパ病院は8日、イスラエルが撤収したハンユニスでパレスチナ人46人の遺体を収容したと発表した。ほとんどは、倒壊したビルのがれきの下敷きになって死亡していた。
まだ倒壊していないビルもすすにまみれ、弾痕が無数に残り、砲撃で損傷していた。
地面には空の薬莢が山積みになり、少なくとも1発の砲弾が転がっていた。
「私の家は完全に破壊された。3階建てだった家は、地面と一緒になった。思い出も何も残らなかった。ほかのみんなと同じように。彼らは残忍なやり方で、わざとこの地を破壊した」。住民だったサアドさんは憤る。
高齢男性のマフムド・アフマドさんは、骨組みだけが残った自宅の中に立ち尽くしていた。かつて部屋があった場所を指さしながら、アフマドさんはかつての家の様子を振り返った。
「あれは私の洗濯機だったが、やつらが燃やした。あのイスラエル人が。ここは居心地のいい場所だったけれど、全部なくなった。あれは私の冷蔵庫だった。見てくれ、ドアが外れている。ここはキッチンだった。何も残っていない」