ハマスが「停戦」受け入れ発表 それでも即時休戦に至らない理由
イスラエルや各国の反応
イスラエルはハマス側の提案について、先週エジプトと協力して策定した内容とは違うと発言している。戦時内閣メンバーのベニー・ガンツ前国防相は6日、ハマスの提案は「これまで仲介役と行ってきた協議内容と合致せず、大きな隔たりがある」と述べた。
CNNの取材に応じたイスラエル政府関係者によると、それでもイスラエルは実務者レベルの代表団を派遣してエジプトとカタールの仲介者と会談し、提案内容を十分に把握して合意締結が可能かどうか判断するという。
最大の争点は恒久的な停戦と、それを合意の中でどのように対処するかだ。ハマス側は戦争終結を要求しているものの、戦争終結はイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相にとっては越えられない一戦だと米政府高官はCNNに語った。
2014年にバラク・オバマ政権下でイスラエル・パレスチナ交渉特使を務めたフランク・ローウェンスタイン氏は、「停戦交渉をめぐって双方が繰り広げる非難合戦で、ここが正念場になるかもしれない」とCNNに語った。
「ハマス側は、これまで仲介役が提案してきた停戦期間についての建設的かつあいまいな表現と、明らかに実現不可能な恒久的停戦の『保証』を受け入れたようだ」とローウェンスタイン氏は言い、ここから先はネタニヤフ氏次第だと付け加えた。「極右の連立相手との政治的駆け引きから、ネタニヤフ氏は、戦争に終止符を打ち選挙の実施につながる可能性のある停戦合意よりも、むしろラファ侵攻を選ぶだろう」
ラファ地上作戦との関係
イスラエルはラファがガザ地区におけるハマスの最後の要衝だと主張している。ネタニヤフ氏は先週、ハマスと合意があろうとなかろうと、米国の圧力を無視して、ラファで地上作戦を実施すると宣言した。
イスラエル軍は6日夜、ラファ東部でハマスを標的としたものだとする場所に空爆を行った。7日午前にはエジプトとの境界にあるラファ検問所のパレスチナ側を制圧し、パレスチナの旗をイスラエル国旗に交換して支配下に置いたことを見せつけた。空爆に先立ち、イスラエル軍はラファ北部で暮らす約10万人の住民に即時退避命令を出していた。
CNN政治国際情勢アナリストのバラク・ラビッド氏は、検問所がハマスの「戦略的拠点」だとCNNのアンダーソン・クーパー氏に語り、ハマスがガザ地区をなおも支配していることを示す象徴的存在だと付け加えた。
イスラエルが検問所を制圧したことで、ガザ地区のパレスチナ住民の目に移るハマスのイメージが損なわれた可能性がある。そのことは「人質交渉でより柔軟性を持たせる」ためのてことして働くとラビッド氏は語った。
今回のラファ軍事作戦は米国が警戒していたほど大規模ではなかった。ラファ侵攻を継続するようネタニヤフ氏に迫り、応じなければ連立を解散すると脅していた一部の過激主義派の閣僚をなだめるのが目的だったようだ。
米政府関係者は7日CNNの取材に応じ、ラファでのイスラエル軍事攻撃をきっかけにガザ南部への大規模な地上作戦が始まるとは考えていないというバイデン政権の見解を示した。イスラエルの軍事計画に詳しい情報筋も、ラファ侵攻は限定的で、停戦交渉に合意して停戦と人質解放を実現させるようハマスに圧力をかけ続けるのがねらいだと述べた。
米国代表として交渉役を務めたこともあるローウェンスタイン氏が言うように、ラファでの軍事作戦はイスラエル、ハマス双方にとって利益となる可能性がある。
「ビビ(ネタニヤフ氏)は米国や国際社会に対抗し、イスラエル防衛で強気な姿勢を打ち出したいと考えている。ハマス側にしてみれば、ネタニヤフ氏がラファで自分たちの思うつぼにはまり、イスラエルが米国をはじめとする諸外国からますます孤立して、国際社会からさらに大きな批判を浴びることになるだろうと考えている」(ローウェンスタイン氏)