ANALYSIS

英国、なぜ中道左派が躍進? 欧州が右傾化する中

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喜びに沸く英国の有権者ら/Suzanne Plunkett/Reuters

喜びに沸く英国の有権者ら/Suzanne Plunkett/Reuters

(CNN) 英国が中道左派の労働党に議会の過半数を与える決断を下した一方で、欧州では広く、右派ポピュリストの台頭と称される現象に見舞われている。

先月の欧州議会選挙では、極右政党から史上最多となる議員が選出された。この選挙結果が大混乱を引き起こし、フランスのマクロン大統領は自国で解散総選挙を宣言。先週の第1回投票では極右の「国民連合(RN)」が勝利した。

オランダでは今週、極右政党のメンバーで構成された政権が発足した。イタリアは、第2次世界大戦時にムソリーニ元首相が率いたファシスト政権以来、最も右派の指導者が国を率いている。これらの選挙での勝利と、右派ポピュリストが政権を握る見通しは、欧州諸国ではもはや驚きではない。

ポピュリズムの台頭には多くの理由があり、各国に固有のものが多い。ただし、大まかに言えば、多くの欧州諸国は経済の停滞、移民の増加、炭素排出量を実質ゼロにする政策の推進を要因の一つとするエネルギー価格の高騰に苦しんでいる。ポピュリストの政治家は、国家の苦境の原因として欧州連合(EU)を非難することが多く、国内で高まるEU懐疑論をたき付けている。

では、EU懐疑論がEU離脱の是非を問う国民投票につながった唯一の国である英国が、なぜこの傾向に逆行すると予測されているのか。

労働党の勝利の規模にかかわらず、選挙の結果を見れば、英国の右派がまだ廃れていないことは明らかだ。保守党にとっては失望の一夜となったことは間違いないが、同党は選挙期間中に実施されたいくつかの世論調査の予想を上回る結果を残す見通しだ。一部の調査では保守党が100議席を下回ると予測されていたが、それが現実になっていたらとてつもない大敗だったと言えるだろう。

世論調査の予想を上回ると見込まれるもう一つの政党は、長年保守党の天敵だったナイジェル・ファラージ氏が率いる右派ボピュリズム政党の「改革党」だ。同氏は最近、トランプ前米大統領との親交でよく知られている。ファラージ氏はそれ以前、英国のEU加盟に反対する活動を数十年にわたり続けた結果、ブレグジット(英国のEU離脱)を実現させたとされている。

ファラージ氏のこれまでの政治的成果はすべて、議席を持たないまま達成されたものだ。今やファラージ氏は議席を獲得しただけでなく、労働党を率いるスターマー党首を攻撃する準備を整えた少数の仲間も抱えている。スターマー氏が獲得した過半数に当たる3桁の議席に比べれば取るに足りないように思えるかもしれないが、ファラージ氏が保守党の今後の方向性に関する議論に影響を与えることは間違いないだろう。おそらく保守党をさらに右傾化させるとみられる。

ファラージ氏が右派を分裂させたことが、スターマー氏の今回の大勝利に貢献した可能性もある。英国政治の奇妙な点は、政党の得票率が必ずしも議席数に結びつかないことだ。議席は個別に決定され、得票数が最も多い候補者が勝者となるが、その得票率は50%未満であることが多い。

労働党が獲得した議席の多くで改革党が善戦したことで、同党は議会で無視できない存在になるだけでなく、その影響力がさらに高まる可能性も十分にある。

英国は他の欧州諸国と同じ問題を数多く抱えている。スターマー氏が首相として揺らぐことがあれば、欧州の他の国々と同様に、大衆に迎合する右派が国民の心を捉え続ける可能性は十分にある。

本稿はCNNのルーク・マクギー記者による分析記事です。

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