人員・装備で劣るウクライナ軍、士気の低下や脱走も悩みの種に
ロシアのプーチン大統領は自身の目標について、ウクライナ東部のドネツク州とルハンスク州全体を支配下に置くことだと明確にしている。要衝のポクロウシクを押さえることは、そうした目標への大きな一歩となるとしている。
ポクロウシクは同地域の他の軍事都市を結ぶ重要な幹線道路と、ドニプロに至る鉄道沿いに位置している。
同地にいるウクライナ軍兵士によれば、戦況は悲惨だ。ウクライナ軍は明らかに人数と装備で劣っており、一部の指揮官の試算によれば、ウクライナ兵1人対してロシア兵が10人いるという。
ウクライナ軍はさらに自らが引き起こした問題でも苦労しているようだ。
ポクロウシクで戦っている旅団の将校によれば、他部隊との連絡が貧弱なことが重大な問題となっている。
この将校によれば、印象が悪くなることを恐れて、戦場の全体像を別の部隊に明らかにしなかった事例さえあるという。
ドネツク州の大隊の指揮官によれば、最近、近くの部隊が報告せずに陣地を放棄したため、側面がロシア軍からの攻撃にさらされたという。
最近までポクロウシクで戦っていた兵士は、東部戦線に派遣された部隊の数が多いため、通信に問題が生じていると述べた。
ウクライナは8月、驚くべき越境攻撃をロシア南西部クルスク州に仕掛け、約30キロにわたりロシア領に侵攻した。
ゼレンスキー大統領を含むウクライナの指導層はクルスク州への越境攻撃の目的について、ウクライナ北部へのさらなる攻撃を防ぐことであり、同時に、西側の同盟国に対して、適切な支援があれば最終的にこの戦争に勝利できることを示すことだと説明している。
越境作戦は疲弊したウクライナの人々に大きな活力を与えた。ウクライナは過去1年間のほとんどで劣勢に立たされ、容赦ない攻撃や停電、痛ましい死傷者に耐えてきた。
しかし、ウクライナとクルスク州の国境付近で話を聞いた工兵隊の兵士は、今回の越境攻撃についてそれほどの確信は持てていないようだった。国境を越える長い任務を終えた工兵は国境近くの閉店した飲食店の外にあるテーブルの周りにうずくまり、車両が現れるのを待っていた。
目を覚ましていようと立て続けにたばこを吸う工兵は、東部前線で混乱が生じているのに、なぜクルスク州に送られるのか疑問を抱いていた。
工兵のひとりはCNNの取材に対し、「ロシアに入国するのは不思議な気持ちだった。この戦争では我々は国と国土を守るはずだったのに、今は相手の領土で戦っているから」と語った。
CNNの取材に答える工兵隊の兵士は疲れ切っている様子だった。ポクロウシクでの任務とクルスク州での任務との間に休息はなかった。
工兵のひとりは「それぞれの指揮官によって異なる。ある部隊は入れ替わりで休みがある一方、ある部隊は休むことなく戦い続けている」と語った。越境攻撃によって士気が高まったかとの質問には懐疑的な姿勢を示した。
工兵のひとりは「3年も戦争が続けば、何もかもが同じように感じられる」と語った。