人員・装備で劣るウクライナ軍、士気の低下や脱走も悩みの種に

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CNNは最近までウクライナ東部で戦っていたか部隊を指揮していた司令官や当局者6人に話を聞いた/Ivana Kottasova/CNN

CNNは最近までウクライナ東部で戦っていたか部隊を指揮していた司令官や当局者6人に話を聞いた/Ivana Kottasova/CNN

ポクロウシク/スーミ/キーウ(CNN) ディマさんは、フィルターまで吸うまで、決してたばこの火を消さない。指先をやけどする危険を冒しても、さらにもう一服。ディマさんはウクライナの前線で何年も過ごしており、心地よい一服の価値を知っている。

ディマさんは大隊の指揮官として、最も激しく最も死傷者の多い戦場で約800人の部下を指揮した。直近の戦場はウクライナ東部の要衝ポクロウシク近郊だった。ポクロウシクは今、ロシア軍の手に落ちようとしている。

部下の多くは今や死亡したか重傷を負っているが、ディマさんはもう十分だと判断した。軍を辞め、首都キーウの事務所で軍の別の仕事に就いた。

ディマさんは事務所の外に立ち、立て続けにたばこを吸い、甘いコーヒーを飲みながら、部下が死ぬのを見るのはもう耐えられなかったとCNNに語った。

2年半にわたるロシア軍の攻勢によって、ウクライナ軍の多くの部隊が多大な被害を受けた。増援はほとんどなく、一部の兵士は疲労困憊(こんぱい)し、士気も低い。ポクロウシク近郊や東部戦線の歩兵部隊の状況は特に厳しいが、ウクライナ軍はロシア軍の進攻を阻止しようと奮闘している。

CNNは、最近までウクライナ東部で戦っていたか部隊を指揮していた司令官や当局者6人に話を聞いた。6人全員が、脱走と不服従が特に新兵の間で広く問題になっていると明らかにした。

ディマさんも含め話を聞いた6人のうち4人が、扱いに慎重を要する話題でありメディアに話す権限を持ち合わせていないことを理由に名前の変更や名前を出さないことを求めた。

ポクロウシクで戦っている部隊の司令官は匿名でCNNの取材に答え、「動員された兵士全員が陣地を離れるわけではないが、大半が陣地を離れる。新兵がここにくると、どれほど難しいかが分かる。新兵は敵のドローン(無人機)や火砲、迫撃砲を数多く目撃する」と語った。「彼らは一度その位置につくと、生き残ったとしても二度と戻ることはない。自分の陣地を離れるか、戦闘に参加することを拒否するか、軍を離れようとする方法を見つけようとするか、いずれかだ」

戦争初期に志願した兵士とは異なり、新兵の多くは自身の選択として戦争に参加したわけではなかった。そうした新兵は今春に成立した新法によって徴集され、特別な許可がない限り政府が動員を解除するまで合法的に出国することはできない。

ただ、規律の問題はずっと前から存在していた。ウクライナは昨年の冬から春にかけて、非常に困難な時期を経験した。米国からの軍事支援の搬入が何カ月にもわたり遅れたことで、重大な弾薬不足と士気の大幅な低下が生じた。

当時、複数の兵士がCNNの取材に対し、ロシア軍が接近してくるのがよく見える好位置にいながら、砲撃を撃つことができなかったと語った。歩兵部隊に十分な援護ができなかったことに罪悪感を覚えたと話す兵士もいた。

戦況が悪化するなか、任務を放棄する兵士の数も増え始めた。ウクライナ議会によれば、検察は2024年1~4月だけで、役職を放棄したり脱走したりした兵士約1万9000人に対して刑事手続きを開始した。ウクライナでは軍や治安部隊に100万人あまりが所属しているが、検察が刑事手続きを開始した対象には前線から遠く離れたオフィスで働く人たちも含まれる。

これは驚くべき数字だが、おそらく不完全な数字である可能性が高い。複数の司令官によれば、多くの将校は脱走や軍務放棄を報告しておらず、罰を受けずに自発的に復帰するよう説得することを望んでいる。

このやり方が一般的となったため、ウクライナは法律を改正し、初めての脱走や軍務放棄について非犯罪化した。

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