ウクライナの越境攻撃、3カ月目に入り「常態化」 次の拠点狙う動きも
ガレオッティ氏は、時間の経過とともに、クルスク州での軍事作戦が常態化しつつあるとしながらも、「ロシアの人々がそれを受け入れるようになったと考えるべきではない。プーチン氏はなんとか判断を先延ばしにしたが、完全に免除されたわけではないだろう」と述べた。
ロシアは、本格侵攻を行っているウクライナの最前線からクルスク州での戦闘に人的・物的資源を転用するのを避けようとしている。
英シンクタンク「王立国際問題研究所(チャタムハウス)」のロシア・ユーラシア・プログラムのアソシエートフェロー、ジョン・ラフ氏によれば、越境攻撃は当初、ロシアの政府と民間人の双方に衝撃を与えたものの、ロシア政府はこれを重要視しない姿勢を示してきた。ロシア政府の戦略として、当惑を引き起こす重大な出来事から国民の目をそらし、深刻なものではないとの印象を与えようとしているという。
専門家によれば、越境攻撃には複数の目標があった可能性が高い。
ラフ氏によれば、ウクライナの目的は、西側の同盟国に対して、ロシアは脆弱(ぜいじゃく)であり、戦闘力を展開する能力に限界があることを示すことだった。今回の越境攻撃によって、ロシアのレッドライン(越えてはならない一線)が言葉だけのものであることも浮き彫りとなったという。
また、ウクライナ軍の士気も上がった。
だが、ウクライナ東部の戦線からクルスク州へロシア軍部隊を引き寄せるという目標は今のところ、実現できていない。
専門家からは、クルスク州が今度も交渉の材料となる可能性があるとの見方が出ている。ラフ氏は、クルスク州の領土を占領することで、ロシアと西側諸国の双方から停戦に言及する可能性を即座に排除したとの見方を示した。
戦争の主な焦点は依然としてウクライナ東部ドンバス地方の最前線であり、要衝ポクロウシクを支配下に置こうと戦闘が続いている。
ロシアは領土の解放に人的・物的資源を集中させるのではなく、ハルキウやドネツク、ザポリージャなど複数の前線に攻撃を拡大した。
ラフ氏は「損失に関係なく、ドンバス地方で可能な限り前進することがロシア政府にとって非常に優先順位が高いようだ」と指摘。「ある種の窓が閉じようとしている。なぜなら、この時期には、道路がぬかるみになるからだ」と言い添えた。