シリア政権派の武装集団が少数派住民を大量殺害、目撃証言や映像浮上

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シリアで武力衝突、政権移行後最悪の事態に

(CNN) SNSに投稿された映像や目撃者の証言によると、シリア新政権を支持する勢力が、少数派アラウィ派の住民を集団で処刑して国家の浄化を口にしている。昨年のアサド政権崩壊以降、最悪の衝突は、アサド派に対する弾圧が集団殺りくに発展する様相を見せつけた。

アラウィ派の住民が多数を占める西部ラタキア県やタルトゥス県の集落は6日、武装集団に襲撃された。シリア当局は、アサド派の武装勢力の蜂起を鎮圧しようとする試みだったと説明している。

在英の独立系人権監視団体シリア人権ネットワーク(SNHR)によると、この衝突で少なくとも642人が死亡した。この中には、政府系の勢力が「広範な現場処刑」を行った若者など民間人も多数含まれるという。

シリアのアハマド・シャラア暫定大統領は9日、この衝突の責任は旧アサド政権の残党にあると非難。民間人の死亡に関与した者は誰であれ責任を追及すると述べ、「アサド勢力の残党は容赦しない」「彼らに選択肢は一つしかない。直ちに出頭せよ」と迫った。

その上で国民の団結を呼びかけ、今回の衝突を「想定された課題」と形容。今回の事件に関する捜査委員会を設置して、被害に遭った地域の住民と対話するよう指示した。

少数派住民に「聖戦」を宣言

襲撃されたラタキア県の住民は、「武装した男たちが家を一軒一軒回って娯楽の形で住民を襲撃していた。彼らはシリア全土で私たちに対する聖戦を宣言した」と証言した。

この住民は、30年間住み続けたラタキアから8日に避難した。ラタキアでは4日ごろから路上で遺体を見かけるようになったとCNNに話している。

別の住民は「人々が避難して、逃げられなかった人たちは殺された」「歴史学教授だった70歳のおじと、60歳の妻は自宅で殺された」と話す。ふたりともタルトゥス県バニヤスに住むアラウィ派の住民だった。

武装集団がラタキア県とタルトゥス県に押し寄せたのは6日夜。これに先立ち、アサド派の勢力がアラウィ派の都市に駐留するシリア新政府軍を襲撃したと伝えられていた。

CNNの取材に応じたホムス在住の女性(35)は、週末に電話で連絡があり、自分の母親と2人の兄弟がバニヤスで新政権を支持する武装勢力によって殺害されたと告げられたという。自分の家族は民間人で、アサド政権派ではなかったと女性は訴える。

半世紀以上にわたってシリアを支配してきたアサド一族はアラウィ派だった。アラウィ派はシリアの人口の約10%を占める。バシャール・アサド大統領は昨年12月、イスラム教スンニ派の武装勢力によって政権の座を追われた。

6日の襲撃が起きたのは、アサド政権を崩壊させた先頭に立った武装組織のメンバーがアサド派に待ち伏せされて殺害されたという情報が出回った後だった。

ラタキアの住民は、「アサド忠誠派は彼らが襲撃した村落にはいない。(武装集団は)そうした集落で普通の人々を殺していた」と証言する。

シリア政府関係者は国営メディアに対し、「組織化されていない大勢の群衆」が同地へ移動して「個別に違法行為」を行ったと述べた。

8日にシリア政府がCNNに語ったところによると、アサド派との衝突で6日以来、治安部隊の少なくとも150人が死亡し、300人が拘束された。

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