30年間給料が上がらない日本の労働者、企業への賃上げ圧力高まる
「企業は従業員を解雇したくないのでバッファー(余裕分)を必要とする。危機が直撃しても雇い続けられるように」(アングリック氏)
成果よりも役職や勤続年数に基づいて賃金が決まる日本の年功序列型の給与システムは、職を変える意欲を低下させる。他の国の場合、転職は賃金の押し上げに寄与すると、マクガワン氏は分析する。
日本を専門とする有力なストラテジスト、投資家として知られるイェスパー・コール氏は以前、CNNの取材に対し「日本の労働市場における最大の問題は、年功序列型の給与体系にこだわりすぎることだ。真に成果に基づく給与体系が導入されれば、転職やキャリアアップが格段に増えるだろう」との見解を示していた。
企業への圧力
先月、岸田首相は経済が危機に瀕(ひん)していると警告。このまま賃上げが物価上昇に追いつかない状況が続けば、日本は(景気後退と物価高が同時に進む)スタグフレーションに陥る恐れがあると述べた。
年3%以上の賃上げは、既に岸田政権の掲げる中心的な目標だった。今や同首相はさらに一歩踏み込み、より形式化されたシステムの創設を計画している。
詳細を問われた政府の報道官はCNNに対し、新しい包括的な経済対策の一環として、賃上げに向けた支援を拡大する意向を示した。それは労働生産性の向上と一体化したものになるという。
当局は企業向けのガイドラインを6月までに公開する方針だ。厚生労働省の関係者が明らかにした。
一方、国内最大の労働団体である日本労働組合総連合会(連合)は、各企業の経営陣と行う今年の協議で5%の賃上げを求めている。年次の労使交渉は今月始まる。
声明の中で連合は、交渉に力を入れていくと強調。労働者の賃金は世界の基準を下回っており、物価上昇の中で支援が必要な状況だからだとした。
既に行動を起こしている企業もある。カジュアル衣料大手「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングは先月、国内の賃金を最大40%引き上げると発表した。近年の国内での報酬が低い水準にとどまっていたことを認めた上での措置だ。
同社の広報担当者はCNNとのインタビューで、国内のインフレもひとつの要因だとしつつ、主な狙いは従業員の報酬を世界基準にそろえ、競争力を高めることだと説明した。
先月公開されたロイター通信の調査によると、日本の大企業の半分以上が年内の賃上げを計画しているという。
大手飲料メーカーのサントリーは、そのうちの1社になるかもしれない。
サントリーホールディングス(HD)の新浪剛史社長は、約7000人の日本の従業員に向けて6%の賃上げを検討している。広報担当者が明らかにした。実現するかどうかは、組合との交渉次第だという。
このニュースを契機として、他の企業も後に続く可能性がある。
東京大学の山口教授は、日本の大手企業の一部が賃上げに踏み切れば他社も多数がこれに続くだろうと予測。競争力を維持するためにも、多くの企業は他社の動向を注視しているとの見解を示した。