お一人様での食事が増加、若年層が流行を後押し 「ご褒美」の側面も
ニューヨーク(CNN) 米国で、一人で飲食店に入り食事をする人が増えている。一人暮らしをする人の割合がこれまでになく多くなり、飲食店で一人で食事をすることに対する忌避感も薄れつつあることが背景にありそうだ。
インターネットで飲食店の予約ができるサービスなどを提供している「オープンテーブル」によれば、着席する飲食店での一人での利用は、ネットでの予約が2024年5月31日までの1年間で前年同期比8%増加した。オープンテーブルが6月に2000人の消費者を対象に実施したオンラインでの調査によれば、回答者のうち60%が過去1年の間に一人で食事をしたことがあり、そのうちZ世代とミレニアル世代が68%を占めた。
一人での食事を好む人の一部は自宅で調理や洗い物をしなくて済むので都合がいいためだ。そのほか、新しい飲食店を試す方法として積極的に一人での食事を求める人もいる。さまざまな調査や飲食店のオーナー、業界の専門家によれば、一人での食事が増えている背景にはZ世代とミレニアル世代の存在がある。SNSによって一人で食事をとるのに適した飲食店を探すのが簡単になったほか、人口動態の変化もこうした傾向を後押ししている。
専門家によれば、平日の一人での昼食や手軽な夕食を提供する「チポトレ」や「スイートグリーン」といったファストカジュアルな飲食店の成長も一部の人たちを後押しし、昼食や夕食時にテーブルやバーに座ることが快適に感じられるようになっている。
飲食業界のコンサルタントで、コロンビア大学経営大学院で教えているスティーブン・ザゴー氏は、食事をめぐる流行は、周囲で起きている大規模な変化を反映していると指摘する。
一人暮らしをする米国人の割合は30%と過去最高の水準に達しているほか、晩婚化が進み、結婚の頻度も減っている。25~49歳の米国人のうち結婚して子どもがいる割合は37%にとどまり、1970年の67%から減少した。
調査によれば、一人で食事をすることに対する消費者の姿勢も変化した。調査会社ミンテルが1200人を対象に行った2022年の調査によれば、回答者の60%がカジュアルダイニングの飲食店で一人で食事をとることに心地よさを感じている。
オープンテーブルによれば、一人で食事をする人の中には、そうした行為について、肩の力を抜く方法であり、自分自身へのご褒美だと考えている人もいる。オープンテーブルの調査によれば、一人で食事をする最大の理由は「自分の時間」だった。
飲食店の予約アプリ「レジ―」が委託した23年の調査でも、一人で外食する最大の理由は、一人の時間を必要としていたというものだった。
マーケティングの教授で「食通」を自称するレアンドラ・ムルトリー氏は、自分自身で体験し、人とのつながりを作ることもできることから、一人での食事を好むと語る。フロリダ州オーランドの飲食店に一人で出かけることが多く、ブランチや昼食、夕食、シェフの特別料理を楽しんでいるという。
ムルトリー氏によれば、インスタグラムで食べ物関連のブログが増えたことで、一人で食事をするのに興味をそそられる場所を見つけやすくなった。一人で外食して新しい料理を試したり、バーテンダーや接客係、来店客と交流したりしているという。
飲食店側も一人での食事が流行していることに気づいており、シェフの特別料理を加えたり、カウンター席を増やしたりするなどの対策を打っている。
コンサルタントのザゴー氏は「飲食店にとっては席を埋めるチャンスだ。飲食店はテーブルではなく席を販売している」と指摘した。