テレビや冷蔵庫はあってもトイレがない 経済大国インドの現実
ムクヘシュさんもカライセルビさんも、大型スタジアムや有名な最高級ホテルから数分の距離にある、3000人規模の典型的なインドのスラム街に住んでいる。隣近所では、1部屋の小さい家に、衛星テレビや冷蔵庫、エアコンなどの最新機器が詰め込まれているが、トイレがある家は1軒も無い。
カライセルビさんがトイレを設置したくとも不可能だ。彼女が住む地区には下水施設が無いのだから。
下水処理施設があるインドの都市はごくわずかだと指摘するのは、低コストで環境にもやさしいトイレをインドの貧困層に40年以上にわたり提供しているNGO(非政府組織)「スラブ・インターナショナル」の創設者、ビンデシュワール・パタック氏だ。
パタック氏は、「スラブ・トイレ」と呼ばれる、斬新かつシンプルな簡易水洗トイレによって何百万人ものインド人の生活を改善してきた。これは、1つの便器に2つの貯留槽がつながり、その1つを使用中に、もう1つでは排泄物を堆肥化する構造となっている。
建築にコンクリートは不要で、排泄物は時間の経過と共に肥料となる。15ドル程度で建築可能で、流すのに必要な水は1リットルに過ぎない。