グリーンランドの氷床から気候変動を読み解く 科学者の挑戦
これは米航空宇宙局(NASA)の人工衛星による観測結果とも一致する。グリーンランド内陸部の氷床では、溶解現象が見られるのは通常の夏では50%程度にとどまっていたが、今年の夏は約97%にも及んだという。
昼は氷の溶解が掘削の障害になるため、掘削作業は夜間を選んで7時間続けられた。
多くの科学者らと同様、キップツール氏は人間の活動が気候変動に及ぼす影響の大きさを根拠なく推定しようとはしない。ただ、人類は大きなリスクを取っていると指摘する。「私たちは、結果がどうなるかもわからずに、自分の住む地球で実験をやっているようなものだ。予測に向けて努力はしているが、変数が多すぎて予測が非常に難しい」と同氏は語る。
より正確な未来図を描こうとする科学者らの努力は続く。観測がひとつ終わるたびに少しずつ目標に近付く一方で、新たな疑問も浮かび上がる。それを解決するには、さらに数十年の歳月がかかるかもしれない。