たばこの吸い殻は最悪のプラスチック汚染物質、フィルターでがん防止できず
米国の海洋保護団体が毎年行っている世界のビーチの清掃活動で回収したごみは、活動を始めた1986年以来の統計で、たばこの吸い殻が最も多かった。ボランティアが集めた吸い殻は6000万本を超えている。
最近の研究では、たばこの吸い殻を浸した水に魚を入れると、4日後に半分の魚が死ぬという実験結果も発表された。この実験についてサンディエゴ州立大学の専門家は、「たばこの吸い殻が原因で海洋環境に有毒物質が染み出し、生物を死なせている」と指摘する。
プラスチックフィルターは、肺がんの不安に対する対策として1950年代に発明された。有害物質を遮断することにより、がんを減らすのが狙いだった。
しかし1960年代半ばになると、フィルターで除去されるタールやニコチンこそが、愛煙家に満足感を与えていることが判明。たばこ会社はフィルターをキープしながら、効果を低減させ、ニコチンがフィルターを通過しやすいようにした。
実際のところ、フィルター付きのたばこを吸えば、最も一般的な種類の肺がんの発症率は減るものの、別の種類の肺がんである腺がんの発症率は増える。つまり、フィルターは愛煙家の健康状態改善の役には立たない一方で、環境問題を悪化させる。
2018年10月、欧州議会は、たばこフィルターのプラスチックを2025年までに50%、2030年までに80%削減することをEU加盟国に義務付けるという野心的な提案を支持した。
しかしその後、この削減目標は退けられた。代わって導入された規定ではたばこ会社に対し、啓発キャンペーンの実施や灰皿設置のための資金を拠出し、環境破壊の原因となるプラスチックがフィルターに含まれていることをたばこの箱に表示することなどを求めている。