シカなどの野生動物にコロナ蔓延 新たなパンデミックの可能性、専門家が危惧
(CNN) 米国に生息するオジロジカなどの野生生物に、新型コロナウイルス感染の痕跡が見つかったという調査結果がこのほど発表された。
たとえ今回のパンデミック(世界的大流行)が収束したとしても、ウイルスが野生生物の間で進化して再び人間に感染する可能性も否定できず、専門家は懸念を強めている。
ペンシルベニア州立大学の研究チームがこのほど発表した論文によると、アイオワ州で2020年9月~21年1月にかけて実施した検査で、シカの3分の1に新型コロナウイルス感染の痕跡があることが分かった。
同大学の専門家は、人が捨てたかじりかけのリンゴや鼻をかんだティッシュ、人が吐いたつばなどから野生生物にウイルスが感染した可能性があると推測する。ウイルスは下水からも見つかっているほか、シカの間で感染が広がった可能性もある。
米地質調査所(USGS)のウィスコンシン支部は、ユタ州で集団感染が起きたミンク農場周辺の動物を検査した。その結果、スカンクやネズミなどの動物が、さまざまな種類のコロナウイルスを保持していることが判明。「コロナウイルスの数の多さや多様性は驚きだった」と報告している。
ただ、新型コロナウイルス感染症を引き起こすウイルスが、そうした動物に感染している痕跡は見られなかった。
それでもミンク農場の家畜や野生生物の間でさまざまなコロナウイルスが蔓延(まんえん)していることは予想外だったと研究チームは解説する。将来的に種を越えたウイルスの感染拡大が起き、新たなコロナウイルスのパンデミックが起きる可能性もあるとしている。この論文は10月に学術誌に発表された。
米農務省は7月に、4州で実施した検査の結果、シカの40%で新型コロナウイルスに対する抗体が確認されたと発表していた。ペンシルベニア州立大学の調査はこれを受けて行われた。
野生生物の新型コロナウイルス感染が危惧される理由は幾つかある。その一つとして、たとえ人から人への感染が食い止められたとしても、動物の間でウイルスが循環し続け、やがて人が再感染する可能性がある。
また、ウイルスが変異して進化する事態はそれ以上に懸念される。
「もしも動物が独自のコロナウイルスを保持していて、人間の間でパンデミックを引き起こすウイルス株が人に感染すれば、そのウイルスが同時に動物にも感染して遺伝物質を交換し、新たなパンデミックを引き起こすウイルス株が台頭する可能性もある」とUSGSの専門家は指摘している。