南極の海氷面積、2年連続で過去最小を更新 科学者ら「終わりの始まりか」
2つの極地域には大きな違いがある。北極が複数の大陸に囲まれた海洋であるのに対し、南極は海洋に囲まれた大陸のため、周辺の海氷は他の大陸に阻まれることなく外側へと拡大していく。南極の氷は北極より薄くなる傾向があり、冬に大幅に増大する一方、夏には急激に縮小する。
南極の海氷面積は2014年に過去最大の776万平方マイル(約2009万平方キロ)を記録。これは南極が比較的地球温暖化の影響を受けにくいとする考え方を裏付けたように見えた。
南極の年間最小海氷面積/National Snow and Ice Data Center
しかし16年、科学者らは海氷が急激に減少する傾向を目にすることになる。当初は南極の複雑かつ多様な気候システムがもたらす変動性に原因があるとみられていたが、2年連続で最小が更新されるに至り、科学者らは懸念を抱いている。
「問題は以下の点だ。気候変動が南極に到達したのか? これは終わりの始まりなのか? 今後も夏は海氷が永遠に消え去ることになるのか?」。独アルフレッド・ウェゲナー極地海洋研究所で海氷物理学部門を統括するクリスチャン・ハース氏はCNNの取材に対してそう述べた。
海氷面積がこれほど減少したのには風や海流、海洋熱など複数の要因が絡んでいる可能性がある。また南極の地域によっては、気温が長期平均と比較して1.5度上昇しているケースもある。
さらに重要な考察は、南極を取り巻く偏西風帯だ。南極振動として知られるこれらの風は海氷の融解を促すことがあり、NSIDCによれば、その勢力は従来の水準を上回っている。また気象条件への影響として、温かい空気を地域にもたらす作用も及ぼすという。
スカンボス氏によると、海面直下に閉じ込められた熱が原因で海氷が融解していることも考えられる。基本的に南極周辺の海水の上層には熱が流れ込んでおり、これが全体的な海洋の温暖化に関係あるとすれば、南極の氷床の安定性にも大きな影響をもたらすと、同氏は分析する。