地球の内核の回転、減速と後退を確認 その意味とは
しかし誰もが納得しているわけではなく、内核の減速が地球にどう影響するのかという疑問は残る。これには地球の磁場が関係しているとする説もある。
地表から5180キロの深部にある固体の金属球の内核は、流体金属の外核に囲まれている。内核は主に鉄とニッケルで構成され、温度は太陽の表面とほぼ同じ約5400度と推定される。
地球の磁場は、この高温の金属球を引き寄せて回転させる。同時に、重力と液状の外核およびマントルが内核を引っ張る。ビデール氏によると、何十年にもわたり、この押したり引いたりの力が内核の回転速度を変化させる。
豊富な金属を含む外核の流体の動きは電流を発生させ、太陽放射線から地球を守る地球の磁場を作り出す。内核が磁場に与える直接的な影響は不明だが、23年の研究報告では、内核の回転が遅くなると磁場に影響を与え、1日の長さがわずかに短くなる可能性があるとした。
内核を研究する目的は、地球の深部がどのように形成され、地下の全ての層の活動がどうつながっているのかを探ることにある/forplayday/iStockphoto/Getty Images
23年の研究では、内核の回転には70年の周期があることを発見。回転速度は1970年代までは地球の自転よりもやや早く、2008年ごろにやや減速し、08年から23年にかけてはマントルに対してわずかに逆方向へ動き始めた。
内核の回転
ビデール氏の研究チームはこの70年の回転周期を確認した。同チームの計算によると、内核は再び加速する時期を迎えているという。もし同チームのモデルが正しければ、およそ5~10年で内核の回転は再び加速し始める。
70年の周期の中で、内核の回転速度はさまざまなペースで減速したり加速したりしていることも分かった。「これには説明が必要だ」とビデール氏は言い、内核の金属が想定ほど固くない可能性も考えられると指摘。もし回転しながら変形しているとすれば、回転速度の対称性に影響を与え得るとした。
同チームの計算では、内核の前進と後退の運動で回転速度が異なることも示唆している。
可能性に満ちている
内核の回転の変化は、観測や測定は可能だが、地上で感知することは不可能だとビデール氏は言う。核の回転が減速すると、マントルは速度を増す。これによって地球の自転が速まり、1日の長さが短くなる。ただしそうした回転速度の変化による影響は、1日の長さの数千分の1秒にすぎない。
内核を研究する目的は、地球の深部がどのように形成され、地下の全ての層の活動がどうつながっているのかを探ることにある。特に流体の外核が固体の内核を覆う謎に満ちた領域は興味深い。流体と個体が接するこの部分はさまざまな活動の可能性に満ちているとビデール氏は語り、「例えば内核の境界には火山があり、固体と流体が出会って動いているかもしれない」と話している。