最後は人肉食に、DNA解析が明かす北極探検隊の壮絶な末路

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「我々の手元には42点ほどの考古学的なDNAプロフィルがある」とステントン氏。同氏はヌナブト文化・遺産部局の遺産責任者を務めた経験も持つ。「子孫の新たなDNAが手に入り、それを考古学的なDNAプロフィルと比較しているところだ」という。

2024年初め、ステントン氏のチームはフィッツジェームズの伝記作者によって直系の子孫であることが突き止められたナイジェル・ガンビア氏に接触した。

英イングランド東部に住むガンビア氏はCNNの取材に、「喜んで協力した。何人もの人が真相解明を試みてきた取り組みだ。本当に興味深いし、個人的な利害関係もある」と振り返る。

自身がフィッツジェームズの遠い子孫であることは前々から認識していたという。フランクリンの探検に加わる前のフィッツジェームズは、英王立海軍の熟練将校だった。ガンビアさんはステントン氏の共著者スティーブン・フラトピエトロ氏にDNAを採取した綿棒を送付し、研究チームが男系子孫をたどるY染色体のDNAを分析。その結果、遺伝情報と考古学的なサンプルの情報が一致した。

エレバス号の艦長だったジェームズ・フィッツジェームズが残した手書きのメモ。新たな研究によれば、「1846年9月12日から氷に閉じ込められていたテラー号とエレバス号は4月22日、この場所の北北西5リーグの位置で放棄された(中略)サー・ジョン・フランクリンは1847年6月11日に死亡し、この探検での死者の総数は今日に至るまで将校9人、兵15人に上る」と書かれている/National Maritime Museum
エレバス号の艦長だったジェームズ・フィッツジェームズが残した手書きのメモ。新たな研究によれば、「1846年9月12日から氷に閉じ込められていたテラー号とエレバス号は4月22日、この場所の北北西5リーグの位置で放棄された(中略)サー・ジョン・フランクリンは1847年6月11日に死亡し、この探検での死者の総数は今日に至るまで将校9人、兵15人に上る」と書かれている/National Maritime Museum

解明すべき手がかりは他にも

探検隊のメンバーで人肉食に遭ったことが判明したのは、高級将校だったフィッツジェームズが初めて。これは探検末期の骨肉の生存争いでは地位など意味を失っていたことを示していると、ステントン氏は語る。

英国立海事博物館のウォリアー氏も同意見だ。「海軍は序列を非常に重んじる集団なので、これは当時の絶望的な状況を示していると考えられる」

ウォリアー氏によれば、DNAを通じて他の遺骨の身元が特定できれば、正確に何が起きたのかという謎を解く一定の手がかりになり得る。例えば、遺骨がベテランのものか若手のものか、テラー号ではなくエレバス号に由来するのか、といった点が分かれば興味深い、と話す。

そのうえで「彼らが死亡した経緯について何か推測できないだろうか」と問いかけた。

カナダ国立公園当局とイヌイットのコミュニティーは2014年にエレバス号、16年にテラー号の眠る場所を突き止めた。消息を絶ったフランクリンの探検隊の運命については今後も興味が尽きないとみられるが、詳しい事実関係をつなぎ合わせるには、これらの沈没船2隻のものを含め、さらなる情報が必要になりそうだ。

失敗に終わったフランクリンの北極探検は複数の書籍や、18年のテレビシリーズ「ザ・テラー」などのドラマの着想源となった。「ザ・テラー」はダン・シモンズによる2007年の同名小説を原作としている。

「この探検は想像の世界でも現実世界でも受け継がれている。」「極地は過酷で危険な場所だ。極地に行けば、自然の前では我々などちっぽけな存在なのだと今でも思い知らされる」(ウォリアー氏)

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