吠えるシカに道路脇のハクチョウ、英写真賞を彩る都会暮らしの野生生物たち
(CNN) 英ロンドン西部の公園では、巨大なアカシカが雨の中で咆哮(ほうこう)している。同市南部では、道路脇に座り込んだハクチョウの背後を赤いバスが走り抜ける。イングランド南西部ブリストルでは、世間慣れした都会暮らしのキツネが縄張りを守ろうとカメラを凝視する。これらの写真はいずれも、今年の「英野生生物写真賞(BWPA)」の優秀作品に選ばれた。大賞は当該の雌ギツネの写真が獲得した。
今年で13回目となった同賞は英国の自然に焦点を当てる。対象は海洋生物から山の生態系、都市部に生息する動物たちまで多岐にわたる。
賞が目指すのは「英国の自然界に存在する並外れた美しさと多様性を展示することだ」。BWPAを統括するウィル・ニコルズ氏は報道向けの発表でそう述べた。今年の賞については、参加する写真家の芸術性と献身を称賛するだけでなく、こうした野生の空間を守る人々の責任についても強く想起させる役割を担うとした。
英国の野生生物は近年、壊滅的な減少に見舞われている。2023年の重要な報告によれば、現在6種に1種近くが絶滅の危機に直面。また1970年代から監視している動植物の個体数は平均で19%減少した。
道端に捨てられたチップスの袋を見つめるハト/Ben Lucas/British Wildlife Photography Awards
大賞賞金3500ポンド(約68万円)を手にした写真家のサイモン・ウィジマン氏は、同じキツネを3年撮り続けた。ブリストルの街路を見回るその後ろに付いて歩き、子ギツネを育てる様子を見守った。同氏は作品を通じ、「日々の都会の風景にある美しさを明示したかった」と語った。
今年の大会には1300点以上の写真が寄せられた。10部門のうち、若手英国人野生生物写真家部門を制したのは、9歳のジェイミー・スマートさん。タンポポに囲まれたダイシャクシギを捉えたその写真は、イングランド南西部のウィルトシャーで撮影した。
スコットランドの雪景色や英国沿岸を泳ぐサメとアザラシなど、劇的な写真も受賞作に選ばれたが、今年の賞を席巻したのは都市に暮らす野生動物だった。
「都市に住む人々にとって、自然とのつながりを保つのはどんどん難しくなっている」「都市部に焦点を当てたこれらの写真は、たとえ開発地域であっても自然と結びつくのは可能だということを人々に教えてくれる」(ニコルズ氏)