「真夜中の子供たち」から40年、ラシュディ氏が振り返る独立後のインド
(CNN) 小説「真夜中の子供たち」の出版から40年。作家サルマン・ラシュディ氏は今、自分の育ったインドは「崩壊」しつつあると語る。
「真夜中の子供たち」は、1947年の英領独立からインディラ・ガンディー首相の波乱に満ちた任期まで、30年に及ぶインドの歴史を作品世界に包含する。英文学賞のブッカー賞を受賞するなど、高い評価を受けてきた。
主人公のサリーム・シナイは1947年8月15日の真夜中、英統治からのインド独立と同時に誕生。ラシュディ氏によると、シナイとインドは双子のようなもので、何らかの形で結びつきを持つという。
「私はこうした、一家と主人公の子どもの人生がインド、パキスタン両国の現実の歴史に投影される作品構造をつくり出さずにはいられなかった」
同書の出版40周年に合わせ、CNNはラシュディ氏にインタビューし、インドの政治情勢や世界での言論自由の重要性、「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切だ)」運動に関する見解を聞いた。
ラシュディ氏の幼少期からインドで何が変わったのか
「真夜中の子供たち」の執筆に5年近くをかけたというラシュディ氏。自身も主人公も、インド・パキスタン分離独立後のボンベイ(現ムンバイ)で生まれ育った。「当時は美しい都市だった。目立った住民間の対立もなく、今より幸せだったと思う」と語る。
当時を振り返り、ラシュディ氏は「宗教はほとんど問題になっていなかった。それに近い友人にはあらゆる宗教の信者や無宗教者がいて、ヒンドゥー教徒にキリスト教徒、イスラム教徒、シーク教徒、あらゆる種類の子どもがいた」と回想する。