ANALYSIS

戦争の実情知らぬロシア国民、ジョージ・オーウェル風のメディア報道に囲まれ

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アゼルバイジャンの首脳と会談するプーチン大統領=2月22日/Mikhail Klimentyev/Sputnik/AFP/Getty Images

アゼルバイジャンの首脳と会談するプーチン大統領=2月22日/Mikhail Klimentyev/Sputnik/AFP/Getty Images

プーチン大統領もテレビでは感情をあらわにした物言いをしてきた。それはバーチャルで行われる安全保障会議や、コロナ感染の可能性を避けるために滑稽なほど長いテーブルの反対側に閣僚を座らせた対面会議でも同様だ。

プーチン氏はある演説で、欧米の目標はただひとつ、「ロシアの破滅だ」と語った。

「だが誰でも、とりわけロシア国民は」と視聴者を安心させるかのように言葉を続け、「つねに真の愛国者とクズや売国奴を見分けられる。そうした奴らは、口に飛び込んできた蚊のように吐き捨てるまでだ」と語った。

だがプロパガンダがあふれる閉鎖された世界では、高揚感が一貫した論理の欠如を補うとは限らない。プーチン氏はウクライナが本当は国家でなく、歴史的にロシアの一部だったと主張する。昨年夏に公表された冗漫な論文でも、ウクライナ人とロシア人は同じ民族だと述べた。だがプーチン氏本人が命じた戦争で、ロシア人は自分たちの「同胞」ウクライナ人を殺している。

ニュース速報にちりばめられた短い映像は、ウクライナ侵攻への支持をかきたてる狙いがある。そのひとつが、「Z」の形に隊列を組む熱心な若者の姿だ。「Z」はウクライナ侵攻の非公式なシンボルで、戦闘地域ではほぼ全ての戦車や装甲車に描かれている――本国ロシアでは、侵攻に異を唱えるロシア人の家のドアにスプレーで描かれることもある。

別の「決起集会」の動画には、ごく一般的なロシア人とおぼしき人々の短い言葉が引用されている。「大統領を支持します!」と発言する男性や、「国民を守るという大統領の政策に全面的に賛成です」と宣言する者もいる。暗い表情で「NATO(北大西洋条約機構)に近づいてほしくない」と言う者もいる。最後の発言者は「みんなで団結しよう!」と呼びかけている。

ジョージ・オーウェルの小説の世界にいるように、ウクライナの戦争は「特別軍事作戦」としか呼ぶことができない。3月4日に可決された法律により、この戦争を「戦争」「攻撃」「侵攻」と表現することは違法とされた。違反者は最高禁錮15年の刑に処せられる場合もある。ロシア軍や「作戦」について「フェイクニュース」とみなされる報道をした報道機関もその対象だ。

戦争に対する反対意見は、ロシアのマスメディアではまったく見受けられない。戦争開始後の数週間にロシア国内で勃発し、1万5000人以上が拘束または逮捕された反戦抗議デモも、国営テレビでは一度も放映されていない。

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