ANALYSIS

戦争の実情知らぬロシア国民、ジョージ・オーウェル風のメディア報道に囲まれ

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ドネツクとルハンスクの「人民共和国」の承認に関する国家安全保障会議でのプーチン氏発言を見守る女性=2月21日、サンクトペテルブルク/Anatoly Maltsev/EPA-EFE/Shutterstock

ドネツクとルハンスクの「人民共和国」の承認に関する国家安全保障会議でのプーチン氏発言を見守る女性=2月21日、サンクトペテルブルク/Anatoly Maltsev/EPA-EFE/Shutterstock

(CNN) 悲痛な映像は、西側諸国の視聴者がウクライナの戦争で目にしているものとそっくりだ。1人の老婦人が分厚いコートで寒さをしのぎ、村を襲ったロケットで焼き尽くされた木造の家の前で泣きながら立ち尽くしている。「彼らに全てを破壊されました!」と老婦人は叫ぶ。「跡形もありません」

だが、これはロシア国営テレビ局「ロシア24」の映像だ。村を襲ったのはロシア兵ではなく、ウクライナ兵だと報じられている。ロシア人特派員はウクライナ兵を「ナショナリスト」と呼ぶ。民間人を「人間の盾」に使う「ネオナチ」「ファシスト」「薬物中毒者」だと言うリポーターもいる。

戦争のニュースはほぼ全て、ウクライナ東部の分離派地域ドンバス地方、ドネツクとルハンスクの自称「人民共和国」から発信されている。主にロシア語が話されているこの地域を、ロシアは2月21日に独立小国家として承認した。

これがロシアのウクライナ侵攻の引き金となり、ロシア政府に侵攻の口実を与えるものとなった。ロシア側は差し迫るウクライナの攻撃から両国を「保護」するしか選択肢がなかったと主張している。とあるニュースの言葉を借りれば、「非ナチ化を実現するには軍事作戦しかなかった」ということだが、ウクライナ側はロシア側の主張を強く否定している。

ロシアのメディアでは、世界中の人々が目の当たりにしているウクライナの他の地域での戦闘はおおむね無視されている。ロシアの爆撃を受けて荒廃したマリウポリ。ロシアの空爆で破壊され黒焦げの住居や建物の残骸が残るハルキウ、チェルニヒウ、ヘルソン、ジトーミルなどの街。血まみれの住人が混乱状態でロシアの砲撃を逃れている首都キーウ(キエフ)周辺の住宅地。こうした光景はロシアのテレビではほとんど報じられない。報じられたとしても、ウクライナ軍の所業とされている。ここ最近ロシア軍が苦戦を強いられていることについても、正確な報道は全くなされていない。

報道は感傷的で、しばしば怒りに満ちた非難や威嚇がにじむ。ロシアの人気トーク番組では司会のウラジーミル・ソロビヨフ氏が欧米を激しく非難し、プーチン大統領が側近からウクライナでの戦況を知らされていないとする米メディアの報道を鼻で笑う場面もあった。

「我々がどんな答えを用意しているか、あなた方はまだわかっていない。アメリカの同志よ、あなた方は今後どうなるか知らないし、知りたくもないだろう」

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