ウクライナの絵画多数、ロシアのミサイル攻撃直前に密かに国外移送
(CNN) ウクライナの首都キーウへのロシア軍による大規模なミサイル攻撃開始の数時間前、ウクライナ国立美術館などからトラックでの密かな持ち出しに成功していた絵画約51点の展示会が、スペインの著名な美術館でこのほど始まった。
秘密裏に梱包(こんぽう)されたこれら絵画を積んだトラックは先月15日にキーウを出発し、予期もしなかった激しいミサイル攻撃にさらされる地域の中をかいくぐるようにして西へ進み、同国リビウ市に到着。その後、同市に近いポーランド側への越境に成功していた。
トラックの車列は同20日にスペインの首都マドリードにたどり着き、国立ティッセン・ボルネミッサ美術館に運ばれた。
ウクライナの文化遺産を守るため協力し合っている美術館グループの団体の声明によると、51点はウクライナ国立美術館や同国のほかの美術館が貸し出したもの。この団体は国立ティッセン・ボルネミッサ美術館の幹部がロシアによるウクライナ侵攻が発生した後の今年3月に結成していた。
同幹部は「ウクライナに対するプーチン(大統領)の戦争は領土を盗むだけでなく、ウクライナの文化遺産などの支配を図っていることも日ごとに明白となっている」と指摘。
展示会の目的はウクライナのモダニズムの歴史を回復させることと説明。「我々が歴史の繰り返しを目にしている時、展示会は我々があらたな惨事にいかに近くにいることを強く思い起こさせるものになる」と強調した。
美術館グループの団体は、今回の展示会は欧州の主要な美術館がウクライナの前衛芸術を主題に催すものとしては最も包括的な規模になっているとした。
国立ティッセン・ボルネミッサ美術館の声明によると、展示会は「嵐の目:1900~1930年代のウクライナのモダニズム」と題されている。20世紀の最初の数十年間にウクライナで生まれた画期的な芸術作品を紹介しているとした。
キーウからのトラック車列が運んだ作品には絵画51点に加え、スケッチ画やコラージュ、舞台美術などの18点も含まれた。
同美術館での展示会は来年4月30日まで続く見通し。その後はドイツ・ケルンにあるルートヴィヒ美術館が新たな会場となり、この後に別の開催場所も決められる予定となっている。