米アマゾン、宅配用車両に車内カメラ設置 ドライバーからは不満も
ワシントンDC(CNN Business) 米アマゾンは先ごろ、宅配用車両の車内カメラで路上とドライバーの両方を監視するシステムを導入したと発表した。安全性の面で同社に利益をもたらすと専門家らが指摘する一方、ドライバーからは一挙手一投足を見られることの影響を懸念する声も上がっている。
アマゾンは最近の動画で、車内カメラの導入によってドライバーは「心の平穏」を得られると説明した。
しかしデラウェア州ウィルミントンでアマゾンの宅配ドライバーとして働くカミール・エリザベスさんは、CNN Businessの取材に対し、1つのミスも許されないような緊張感があると明かす。カメラの記録する内容によっては、ドライバーの仕事を失うこともあるのではないかと不安を覚えるという。
アマゾンの広報担当者はCNN Businessの取材に応じ、1つのミスでドライバーが解雇されることはないと述べた。ただ同社が宅配を請け負う提携企業に対し、カメラの記録をどう評価するよう推奨しているのかについて、詳細は明らかにしなかった。
宅配用車両の車内カメラには人工知能(AI)が搭載されている/Amazon/Vimeo
アマゾンによれば、車内カメラによる映像が同社に送られるのは急ブレーキや急加速、Uターンといった特定の条件が発生した場合のみに限られる。
米バージニア工科大学交通研究所でドライバー監視システムを研究するマシュー・カムデン氏は、調査の結果、従来の監視システムによって衝突事故が38.1%低減したと明らかにした。撮影内容の評価をリアルタイムで行い、ドライバーに改善を促す機能などが備わった人工知能(AI)搭載型のシステムであれば、より大きな効果が得られるはずだという。
前出のエリザベスさんは、宅配中に強盗に遭った同僚などに言及し、車内カメラでドライバーの安全が守られることもあるとの見方を示した。
テキサス州ガーランドでアマゾンのドライバーとして働くフアン・ラモスさんも、安全な運転を促すカメラの新機能については好意的に受け入れている。ただ同僚の中には、細かい点まで管理されることへの不満や、ちょっとした違反で仕事を失うような事態に陥るのではないかといった懸念を口にする人もいる。カメラにカバーをつけているドライバーが複数いるのも知っているという。
そのうえでラモスさんは、荷物を届ける必要に迫られてUターンやバックをしているのに、それを理由にマイナスの評価を受けるのは「フェアじゃない気がする」と語った。