詩を書き芸術を生み出す、人型ロボット「エイーダ」
メラー氏は「エイーダ・プロジェクトは、AIをさらに進化させ、人間や人間の行動を模倣できるようにすることの倫理をめぐる論争に対処するために開発された」と述べた。
「そして我々はついに、テクノロジーが生活のさまざまな側面に多大な影響を与えていることに気付いた。そして我々が今把握しようとしているのは、このテクノロジーがどれだけやれるのか、そしてテクノロジーから我々自身について何が学べるかだ」(メラー氏)
メラー氏によると、メラー氏とエイーダ開発チームがエイーダを開発する中で学んだ重要な点のひとつは、エイーダがいかに人間に近いかではなく、我々人間がいかにロボット的か、だという。
エイーダは人間の行動を基に人間を模倣する方法を学んでいるため、メラー氏は、このプロジェクトから人間がいかに物事を習慣的に行っているか、そして我々がいかに同じ動作、言葉、行動パターンを繰り返しがちかが分かったという。つまり、ロボット的なのは実は我々の方ということだ。
「エイーダやAIの活用により、我々はこれまで以上に自分自身について学ぶことが可能だ(中略)エイーダのおかげで、我々は自分たちにどのような行動パターンや習慣があるのかを把握できる。なにしろ彼女が我々の目の前で我々の癖を正確にまねしてくれるのだから」(メラー氏)
エイーダができるのは詩の読み書きだけではない。エイーダには芸術作品を生み出す能力もあるのだ。エイーダはダンテ展向けに「アイズ・ワイド・シャット」と題した作品を作った。この作品は、21年10月にエジプトで起こったある事件を受けて制作された。エジプトの警備隊が、監視や警備上の懸念からエイーダを拘束し、彼女の目に搭載されているカメラを取り外すよう要求したのだ。
「この事件で、世界の国々がテクノロジーとその進歩についてどれほど神経質になっているかが分かった」(メラー氏)
またメラー氏は、さらに高度化するAI開発や、アルゴリズムを使って人々をコントロールする可能性に対する懸念も認識している。しかし、メラー氏は「テクノロジー自体に害はない(中略)テクノロジーを操作する人々の意図のほうが道徳的にも倫理的にも疑問の余地があるかもしれない」と指摘する。
またAIの未来は我々をどこに導くのかという懸念について、メラー氏は「我々が最も懸念すべきは我々自身と、人間にはテクノロジーを使って人々を抑圧する能力があるという点であって、AI自体ではない」と述べた。
メラー氏は、エイーダはAIの世界のパイオニアとなり、詩や芸術作品など、彼女が生み出したものがテクノロジーで達成可能なものの限界を押し上げると同時に、我々もロボットの目を通して、これまで以上に自分たちのことについて学べるようになると考えている。