セクシーシェフの料理動画、フォロワーを集める理由は ネットの飽くなき欲望に照準

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「ドーナツ・ダディー」ことアンソニー・ランデロヤーン氏。インターネットが夢中になっているシェフの一人だ/Photo illustration by CNN/Getty Images/Anthony Randello-Jahn

「ドーナツ・ダディー」ことアンソニー・ランデロヤーン氏。インターネットが夢中になっているシェフの一人だ/Photo illustration by CNN/Getty Images/Anthony Randello-Jahn

(CNN) 時には、ウインクや投げキスで動画が始まることもある。

その後に続くのは、割れた腹筋のショットや、パスタ生地をこねる指先のクローズアップかもしれない。男性たちは果物をなで、舌で茎をもてあそぶ場面まである。食材にオイルや塩をすり込み、手があらゆる曲線とすき間をなぞっていく。

あらゆる動作が強調され、料理のレシピを探しているのかどうかも分からない視聴者に対し目配せを見え隠れさせる。より露骨に言えば、これらの動画は視聴者を興奮させることを目的にしているのだ。

よくあるSNS上の料理動画とはひと味異なる。出演者はあからさまに視聴者を誘惑しており、気持ち悪さと魅力の間で危ういバランスを取る。最後にはやはり、見事な仕上げの料理が登場するが、そこに至る過程はネット上の他の料理人のやり方とはかけ離れている。しかも、これらの動画に登場するシェフたちは絶大な人気を誇り、フォロワー数は合計で数千万人に上る。

コメント欄にはファンからのプロポーズの言葉や、突然妊娠したという冗談があふれる。さらに一歩踏み込む視聴者もいる。「ドーナツ・ダディー」というアカウントを運営するシェフ、アンソニー・ランデロヤーン氏(インスタグラムとTikTokのフォロワー数は計220万人で、血管の浮き出た腕が特徴)の元には、時折カップルからも半ば本気の誘いが届く。

こうしたクリエーターたちが爆発的な人気を博し続けているのは、一見不思議に思えるかもしれない。特にZ世代やミレニアル世代の若年層はセックスの頻度が減っているとされるうえ、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)以降、とりわけ女性の性欲が顕著に減少していることが複数の研究で分かっているからだ。

一方、禁欲は新たなトレンドになりつつある。理由はリプロダクティブ・ライツ(生殖に関する権利)を訴える抗議からメンタルヘルスの保護まで様々だが、著名人(レニー・クラビッツやシェリル・バーク)の間でも一般人の間でも、セックス断ちを誓う動きが広がっている。中には、今風のSNS映えする表現で禁欲を「ボーイソバー」と呼ぶ人までいる。

だが、こうした料理動画の人気は、私たちの文化のあらゆる側面に今もセックスや官能性が豊富に見つかることを浮き彫りにしている。

「性的なコンテンツが至る所にあふれる状況がなくなったわけではない」。米アリゾナ州立大学で性的コミュニケーションを研究する学者、チェルシー・レイノルズ氏はそう語る。「予想もしない形や、見慣れない形で表れているだけだ」

セクシーシェフの動画は「親密な体験」になり得る

食や食品労働者への性的な関心自体は、決して目新しいものではない。ピザの配達員に性欲を抱く、というのはハリウッドでも比較的定番の展開だ。最近でも、「一流シェフのファミリーレストラン」で一躍ブレークを果たしたジェレミー・アレン・ホワイトが、架空の料理長役の演技で全米のセックスシンボルとなった例がある。

きわどい料理動画と数百万に上るそのファンは、こうした大きな文化的潮流の一部として位置づけられると、レイノルズ氏は指摘する。英国の料理コンテスト番組「ブリティッシュ ベイクオフ」の人気から、新型コロナ禍で流行したサワー種まで、料理は現代社会に通底するテーマだ。こうした要素から直接、小麦粉の生地に顔を埋めるセドリック・ロレンツェン(インスタグラムとTikTokで計1040万人のフォロワーを誇り、鋭いあごのラインが特徴)の動画が生まれたわけではないかもしれないが、家庭的な話に特異な関心が寄せられていることを示す現象ではある。

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