東京のタイムカプセル、ホテルオークラの取り壊しを惜しむ
(CNN) アジアの宿泊施設のスター的存在だったホテルオークラ東京の本館が建て替えられることになった。1962年に開業し、時代の中に取り残されたような趣が魅力だったタイムカプセル的ホテル。2020年の東京五輪に向けて、本館の建物は来年8月に閉館となり、取り壊される。
オークラの内装やデザインは、開業から50年たってもほとんど変わっていない。柔らかな照明に照らされたメーンロビーは訪れた客を魅了し、セイコーの時計が入った世界地図には今でもレニングラード(現サンクトペテルブルク)の時刻が表示される。
バー「ハイランダー」では世界各地でとうに姿を消したカクテルが注文でき、係員の行き届いた応対もほかでは体験できなくなりつつある。
客室は60年代から改装されたとはいえ、現代の標準からみると窮屈で時代遅れな印象だ。100キロもある取材用のカメラ機材を特別小柄な女性スタッフに部屋へと運ばせるのは素晴らしい配慮とは思えないし、ルームサービスのメニューはアジア一値段が高いと思う。
それでも枕の上に置かれた折り紙の亀を見ると、そんな欠点などどうでもよく思えてしまう。
何でも取り壊して大きく作り直すのが主流のアジアにあって、ホテルオークラはかつて素晴らしかったものへの敬意を思い起こさせる存在だった。
ホテル側は建て替え後も日本の伝統的な美を保つ意向だが、古い建物の趣をすべて再現するのは不可能に思える。
前進やリノベーションが必要な時と場所があることは分かる。それでも、それがこの時、この場所であってほしくないと思う。
ライフスタイル誌のモノクルは、オークラの保全を呼びかける署名運動を始めた。この運動の成功を祈りたい。