日本古来のすし「なれずし」、その独特の味わいを楽しむ
すし職人は、この魚を薄く切り、ご飯の上にきれいに盛り付けて客に出す。
なれずしをお茶漬けやてんぷらにすることもあるが、どのような形で出すにしろ、強烈なにおいと、思わず口をすぼめてしまうほどの酸味のせいで、好き嫌いがはっきりと分かれる食品のひとつだ。
無論、なれずし通にとっては、臭ければ臭いほどいい。
大橋氏は高校時代に初めて鮒ずしを食べた時、非常に不味いと感じたが、同じく料理人だった父が汁に入れたところ、はるかにおいしく感じたという。最初は抵抗があった鮒ずしも、次第にその味のとりこになった、と大橋氏は言う。
鮒ずしは米飯の乳酸とバクテリアが徐々に魚を分解し、適切に調理すれば魚の頭まで食べられるという。それこそが良い鮒ずしの証しだ、と大橋氏は語る。
大橋氏は、地元の人々が1000年前からこの方法で鮒ずしを作っていることを誇りに感じており、鮒ずしを食べると歴史を感じるという。
大橋氏の知る限り、最古の鮒ずしは1世紀もの間発酵し続けている。発酵により100年経っても腐らないが、100年も経つとほとんど液体化しているという。