「台湾の非武装地帯」金門県、かつての軍事拠点は今や人気の観光スポットに
(CNN) 台湾・金門島の北西端の丘の上に、48台の拡声器が埋め込まれたコンクリート製の巨大な壁「北山放送壁」がある。
数十年前、海に向かって設置されたこのプロパガンダ用の壁からアジアの「永遠の歌姫」故テレサ・テンさんの歌が、海の10キロ先まで届くほどの大音量で流されていた。テレサさんの歌は、中国本土の都市、厦門(アモイ)の住民に向けたものだった。
1967年に設置されたこの壁は、中国共産党と台湾の与党国民党の間の冷戦において重要な役割を果たした。台湾当局は、この壁から台湾の有名歌手の歌だけでなく演説も流し、その中には本土の兵士に亡命を促す内容のものもあった。
一方、中国本土も「お返し」とばかりに厦門に設置した拡声器から海の向こうの台湾に向けて独自の国家主義的メッセージを大音量で流した。
なぜ金門島のような小島がそこまで重要視されるのか?
中国本土と台湾は、国共内戦で中国共産党が中国本土で勝利し、敗れた中国国民党が台湾に逃れた後、1949年から現在まで別々に統治されてきた。中国本土と台湾は、政治的には何十年間も敵対関係にあるが、共通の文化的、言語的遺産の大半が今も存続している。
しかし、中国政府は台湾を中国固有の領土とみなし、それを否定する見解を強く非難している。
故テレサ・テンさんの歌声を大音量で流していたというプロパガンダ用の壁/An Rong Xu/Getty Images AsiaPac/Getty Images
金門島がある金門県は、中国本土の都市、厦門と台湾本島の間の台湾海峡に浮かぶ島々で構成されているが、金門島は台湾本土よりも厦門に近いため、何十年もの間、戦略的、地政学的に重要視され、時々、同島で中国・台湾間の戦闘も発生している。
金門島は、1949年から92年までの43年間軍政下にあったが、中国本土と台湾の関係改善に伴い、90年代初頭に旧軍事基地での放送は終了した。
金門固有の歴史
2001年に「小三通」が施行されたおかげで、金門県の島々は近年、中国本土の人々に非常に人気の高い観光地となっている。
この小三通により、金門県や馬祖列島の沿岸部の都市を通じて、台湾と中国本土との間で三通(通信・通航・通商)が限定的に実施されるようになった。
金門島にはかつて軍事拠点だった頃の跡が残っており、歴史通の人々にとっては魅力的な観光スポットだ。
韓国世宗研究所中国研究センターのソンヒョン・リー所長は、2019年に金門島を訪問し、韓国と北朝鮮の国境に位置する非武装地帯(DMZ)と比較した。
リー氏は「私は(金門島を)『台湾のDMZ』と呼んでいる」と述べ、「恐らく金門島を訪れる大半の韓国人は同じように感じるだろう」と付け加えた。