消えゆく氷河に駆け込み観光 危険増大、死者も後を絶たず

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バルディーズ氷河から発生した氷山の内部でカヤックをこぐ観光客/Piriya Wongkongkathep/Moment Editorial/Flickr Vision/Getty Images

バルディーズ氷河から発生した氷山の内部でカヤックをこぐ観光客/Piriya Wongkongkathep/Moment Editorial/Flickr Vision/Getty Images

(CNN) 2019年夏のある晩、アラスカ観光ガイドのザック・シェルドン氏は、バルディーズ氷河の一画が崩れ、巨大な氷の塊が下の湖へとなだれ落ちる光景を目にした。シェルドン氏は翌朝、その現場を見物しようとツアー客の一行を氷河の頂上に案内した。ところが水面を見下ろした瞬間、何かが目に飛び込んできた。ツアー客にはそこから動かないよう指示した。

最初の2人の遺体はカヌーにしがみついていた。50メートルほど離れた場所に3人目の遺体があった。3人は氷河の端にギリギリまで近づき、安全な場所に逃げようとして、氷と雪解け水とがれきに巻き込まれた。

被害者は、ドイツ人2人とオーストリア人1人と判明した。バルディーズ湖でボートに乗っていて、あまりに青い氷の色に惹(ひ)かれて氷河に近付いたらしい。ひときわ際立つその色彩が、今にも氷河が崩れ落ちようとする兆候だとは知らないまま。

死亡した3人は、急速に消えゆくアラスカの氷河を見物に訪れて命を落とした観光客たちの、ごく一部に過ぎない。死者の数は比較的少ないかもしれないが、それぞれの悲劇が、変わりゆく景観に潜む危険を物語る。

チュガッチ国立森林公園内にあるバイロン氷河の上空を漂う雲=米アラスカ州/Colin D. Young/Alamy
チュガッチ国立森林公園内にあるバイロン氷河の上空を漂う雲=米アラスカ州/Colin D. Young/Alamy

氷河ツアーはここ数年でブームになっている。理由はさまざまだが、氷河が消滅する前に見ておきたいという人も増えている。

この現象を研究しているオタワ大学のジャッキー・ドーソン准教授によると、「最後のチャンス観光」と呼ばれる市場は拡大している。

氷河は最後のチャンス観光地の代表的存在になった。人間が化石燃料を燃やして地球を温暖化させ続ける中で、世界の氷河の多くが縮小している。たとえ気候変動対策で最善の成果が出たとしても、2100年までに世界の氷河の半分が消滅する可能性がある。

氷河が解ければ、近づきやすくなると同時に危険も増す。

氷は解けると動きが大きくなる。氷河はますます不安定になり、岩や堆積(たいせき)物の落下が増え、クレバスの増大が加速する。

8月にはアイスランドのブレイザメルクルヨークル氷河で氷の洞窟が崩落し、米国人観光客が死亡した。この事故は、観光業に大きく依存する同国を揺るがした。夏の氷の洞窟ツアーは中止され、政府は新しい安全規制を検討している。

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