米国の格差拡大、FRBのせい? 元議長らから反論
バーナンキ元議長はまた、金融刺激策は「必ずしも格差拡大につながらない」とする米シンクタンク、ブルッキングス研究所の論文に言及する。この論文はジョシュ・ビベンズ氏によって書かれたもので、格差問題に対する金融緩和の最大の効果として、雇用改善に好影響をもたらした点を挙げる。バーナンキ元議長はこれを踏まえ、労働市場の回復こそが「貧困に対抗する我々の最大の武器」だとしている。
FRBの量的緩和政策の効果は株式市場だけにとどまらない。住宅ローン金利を低下させ、壊滅状態だった住宅市場を押し上げた。ビベンズ氏によれば、株式市場の回復は格差拡大につながる側面がある一方、住宅価格の上昇は格差を縮小させる効果を持つ。住宅評価額は中流層の資産の大部分を占めているからだ。住宅価格は中流層の家計資産の62.5%を占めているが、貧困層では28%、上位1%の富裕層では9%以下とされている。
格差拡大は金融危機の最中に生まれた現象ではないことも忘れないようにしたい。バーナンキ元議長が指摘するように、格差はグローバル化などさまざまな要因が絡みあい、この数十年にわたり米国で徐々に深刻化してきた問題だ。
ただ、FRBが利上げを早まれば逆効果を招き、格差をさらに拡大する結果となる恐れもある。労働市場が完全に回復する前に利上げに踏み切った場合、「とりわけ低・中所得層の賃金に打撃を与えることになる」とビベンズ氏は懸念する。FRBには、収入格差の問題を念頭に置いて次の動きを模索することを期待したい。