OPINION

トランプ氏に投票した有権者の声を拾う方法

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ペンシルベニア州でバイデン氏当確の報道を受けて州都ハリスバーグで選挙の不正を訴え怒りの声を上げるトランプ氏支持者=11月7日/Spencer Platt/Getty Images

ペンシルベニア州でバイデン氏当確の報道を受けて州都ハリスバーグで選挙の不正を訴え怒りの声を上げるトランプ氏支持者=11月7日/Spencer Platt/Getty Images

(CNN) 死と税金ほど確実なものはない。一方、世論調査に基づく予測は確実とは言えない。

先日の米大統領選で我々は再び学ぶことになった。フロリダ州やウィスコンシン州など選挙のたびに共和、民主の間で勝敗が変わるスイングステート(揺れる州)で、選挙前の世論調査が、投票日に実際に有権者が投票したよりもはるかにバイデン氏有利との数値をたたき出していたことだ。トランプ氏は世論調査でバイデン氏リードとされていたフロリダ州で勝利を収め、バイデン氏ともっと大差になると見込まれたウィスコンシン州では僅差(きんさ)での負けとなった。

もし選挙結果について市民に予測を立てさせる行為に何らかの意味があるとするならば、世論調査のプロは今回の結果を精査し、次回はもっと精密な予測を行う必要がある。

寄稿者のリッチ・トー氏/Juan Kis
寄稿者のリッチ・トー氏/Juan Kis

この目標の達成を後押しするのに、私から控えめな提案が1つある。それは、世論調査のように一般に公開されている量的調査を、集団面接法(フォーカスグループ)や1対1の深層面接法(インデプスインタビュー)、行動観察を伴うエスノグラフィー調査などの質的調査と継続的に結びつけていくことだ。

自由なやりとりから得ることのできる洞察は、決まった質問から得られるものとは大幅に異なり、そして時にはるかに有益なものとなる。さらにこれらの手法を合わせて使えば、1つの方法だけでは得られない洞察を得ることが可能だ。

私はこれを肌で感じている。過去1年9カ月の間、私は選挙戦を前にして、世論調査を注意深く追いつつスイングステートで集団面接を実施してきた。それはまるで別々のスクリーンを見ているかのような体験だった。

今年7月にCNN.comの論説で説明したように、私が自社で実施する集団面接法による調査は、その当時の選挙関連の調査とは結果がずれていることが度々だった。世論調査は大抵、民主党候補のジョー・バイデン氏がはるかに優勢と示していた。世論調査のサンプルのサイズは私の調査よりはるかに大きいので、私は当時も今もけんかを売るつもりはない。ただ、集団面接法のモデレーターとして、有権者全体のごく一部だが極めて重要な人々が、一貫してドナルド・トランプ大統領を力強く支持するのを聞いてきた。

この人々は、フロリダ、アイオワ、ミシガン、ミネソタ、ペンシルベニア、オハイオ、ウィスコンシンの各州内の「揺れる郡」に住む、いわゆる「オバマ―トランプ」有権者(訳注:2008年や12年の大統領選ではオバマ氏に投票し16年にはトランプ氏に投票した有権者)からなる。我々は2019年3月から2020年11月まで、スイングステートの有権者を調査する「スイング・ボーター・プロジェクト」の一環で毎月彼らと集団面接を実施してきた。

ごく一部の例外を除き、そうした集団面接全体を通して言えることは、参加者の約3分の2から4分の3がバラク・オバマ前大統領との仮想決戦やバイデン前副大統領との最終決戦を想定して、トランプ氏を支持すると答えるのが常だったことだ。

バイデン氏がかつてオバマ氏に投票した有権者をより高い割合で奪い返せなかった事実は、常に注目に値すると思った。トランプ氏の支持者はその発する言葉から、姿勢が固まっていてバイデン氏にくら替えする可能性はなさそうだった。

参考として、集団面接法は世論が変わるのを早く察知するシステムであることに触れておく。世論調査で何か重要なことが起きるとき、まずは集団面接法の会話の中にそれが現れることがしばしばある。

この経験から、私は先月クライアントに向けて次のことを自信を持って書いた。

「私のヒアリング結果に基づくと、こうした揺れる有権者の約4分の3が現大統領から離れない。バイデン氏が残りの4分の1を奪い返せるかどうかが選挙を勝つのに十分な票を確保することにつながるかはまだわからない。だが、もしトランプ氏が負けるとしても(世論調査の結果はそれが起きると示している)、それはトランプ主義――そして彼を押し上げた経済的なナショナリズム――の死を意味するわけではない。米国は私が今毎月話をしている人を無視する危険を冒している。中西部の北部にいる労働者の人々だ」

バイデン氏が一般投票で勝ったとしても、なぜこれほど多くの「オバマ―トランプ」有権者がトランプ氏を支持し続けるのかを理解することは極めて重要だ。

彼らはこの国を経済的に好転させるにはビジネスマンが一番適任だと考えている。新型コロナウイルス感染症(Covid―19)はトランプ氏の失策ではないと感じ、その封じ込めのために最善を尽くしていると信じている。ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大事)の運動で抗議する人々を、連邦政府の建物や小売店を襲撃する暴動参加者と無意識的に同一視している。そして、警察の予算削減は街の安全を脅かすものとして却下する姿勢を示す。

こうした有権者は私に、最終的には米国第一主義を望んでいると語る。自分たちの犠牲の上によそ者に利益を与える移民の流入や貿易政策には反対する。社会主義を恐れる。あまりに多くの公職者が既得権益を前に屈してきたのを見て、容赦なく反撃できる政治家以外の人物を求めている。

このような有権者は典型的なFOXニュースの視聴者のように聞こえるかもしれないが、その大多数は違う。むしろ、多くの人はニュースを地元のテレビ局と地域のウェブサイト、フェイスブックというソースに偏って取得している。全国的なケーブルチャンネルにニュースを求める種類の人々と比べて、多くの揺れる有権者は国家政治の砂漠地帯に住んでいる。

一つの新しい、目を丸くするような傾向が最近現れ、注目する価値がある。それは「オバマ―トランプ」有権者の間での陰謀論の流行だ。CNNのダナ・バッシュ氏もこれをリポートしていた。

南カリフォルニア大学が最近発表した研究によると、いくつかのスイングステートでの世論調査との大きな不一致と、陰謀論のQアノンへの平均以上の興味関心との間には相関関係があった。

9月下旬のオハイオ州や10月上旬のミシガン州で実施した有権者との集団面接では、参加者がハリウッドの人々のモラルや新型コロナウイルス流行の深刻さ、第1回討論会におけるバイデン前副大統領のパフォーマンスの質を疑問視する様々な主張を、ほとんど根拠を示さずに展開していた。

私からの警告はこうだ。注意をあまり払っていないこうした有権者に多くの注意を向けるべきだ。また彼らがソーシャルメディア、特にフェイスブックとユーチューブで見ているものに多くの注意を向けるべきだ。彼らは米国の未来について非常に重要な警告を発している。

本記事は調査会社エンゲージャスの社長で共同創業者のリッチ・トー氏が寄稿したものです。同社は業界団体や支持団体に対しメッセージをテストし改善する業務を専門としています。トー氏はスイング・ボーター・プロジェクトのモデレーターも務めています。記事における見解はトー氏個人のものです。

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