バイデン氏、石油備蓄の放出を発表 「一夜で価格高騰を解決しない」
(CNN) バイデン米大統領は23日、戦略石油備蓄を放出すると発表した。年末の旅行シーズンを前に石油価格の高騰に対応する狙いがあるが、放出された石油が米国市場に到達するのは数週間先のことになる。
ホワイトハウスによると、エネルギー省は戦略石油備蓄から5000万バレルを放出する。バイデン氏によると、これは過去最大の放出量になるという。
バイデン氏はこの日、今回の措置が「石油価格高騰の問題を一夜にして解決することはない」と説明。「時間はかかるが、やがて国民は給油所でガソリン価格が下がるのを目にするだろう」と述べた。また「長期的には、クリーンエネルギーへの移行が進むにつれ、石油への依存度は低下する」とも指摘した。
今回の放出は世界中で起きている石油供給不足に対応するのが狙いだが、実際の効果は限定的だ。エネルギー省エネルギー情報局(EIA)によると、2019年の米国の石油使用量は平均で1日約2050万バレル、20年の使用量は1日約1810万バレルに上る。EIAによると、新型コロナウイルス禍の影響で、20年の使用量は例年より少なかった。
政権高官によると、23日発表分の石油が市場に到達するのは、市場の状況次第で12月中旬から後半になるという。
今回の放出は中国やインド、日本、韓国、英国を含む他国と協調して行われる。複数の当局者からは、協調した取り組みにより、石油価格抑制の効果が高まる可能性があるとの見方が出ている。
エネルギー省によると、19日時点で戦略石油備蓄にある石油の量は6億450万バレル。
今回の発表は、ホワイトハウスに対してガソリン価格高騰の抑制を求める声が強まる中で行われた。ガソリン価格高騰はここ数十年で最大のインフレ高進を招く要因となっており、米国民の間ではいら立ちや怒りが募っている。
ただ、戦略石油備蓄の放出がどれほど価格に影響を与えるかは不透明だ。むしろ石油輸出国機構(OPEC)やロシアに対して、米国が価格引き下げに本気だという姿勢をアピールする狙いが大きい可能性がある。
バイデン政権の当局者はサウジアラビアに対して、原油価格が1バレル85ドルを超えたら米国は別の解決策に出ると数週間にわたり警告していたが、この価格は先月後半に到達した。
米当局者2人によると、サウジアラビアは増産を拒否する姿勢を示していて、米国がイランとの核交渉で合意に達する可能性を織り込んでいるという。サウジが懸念しているのは制裁を緩和されたイランが原油を増産し、ロシアを含むOPECプラスと競合関係になることだという。