70年前の黒人少年惨殺、発端となる証言した白人女性が死去 米
(CNN) 米ミシシッピ州で黒人少年のエメット・ティルさんが惨殺された約70年前の事件で、殺害につながる主張を行った白人女性のキャロライン・ブライアント・ドナムさんが死去した。88歳だった。同州カルカシュー郡の検視官事務所がCNNに対して明らかにした。
検視官の発表によると、ドナムさんは25日、ルイジアナ州ウェストレークで亡くなった。
1955年8月、ミシシッピ州マネーでドナムさんの夫と夫の兄が就寝中だった当時14歳のエメットさんを連れ出し、トラックに乗せて暴行。頭部を銃撃して遺体を川に投げ捨てた。当時20歳だったドナムさんはこれより前、エメットさんが自分に向かって口笛を吹いたと訴えていた。
夫と夫の兄の2人は殺人罪に問われたが、裁判でドナムさんがエメットさんにつかみかかられて言葉で脅迫されたと証言。全員白人の陪審団は、2人を無罪とした。
2人はその後、56年の雑誌のインタビューでエメットさん殺害を認めている。1人は80年に、もう1人は94年に死亡した。
2007年、ミシシッピ州の大陪審はドナムさんを不起訴としたが、その後本人が証言の内容を覆したと伝えられ、再捜査を求める声が強まった。
司法省は18年にエメットさん殺害に関する捜査を再開したが、21年12月にこれを終了。22年8月にはミシシッピ州レフロア郡の大陪審が誘拐と殺人の罪でドナムさんを起訴するための証拠が不十分と判断し、不起訴としていた。
エメットさん殺害事件は当時全米に衝撃を与え、公民権運動に火が付くきっかけになった。
エメットさんのいとこで牧師を務めるウィーラー・パーカー・ジュニアさんは27日、ドナムさんの死去を受け、遺族への哀悼の意を表明。60年間信仰に生きる自分にとってはいかなる人の死も悲劇であり、ドナムさんに対して悪意や恨む気持ちは一切ないと述べた。
事件について証言した存命中の最後の証人でもあるパーカー・ジュニアさんは、エメットさんを最良の友人と振り返り、今後その死に責任を負う者が誰一人いなくなっても、残された自分たちには人種に根差した不公正を乗り越える責任がなお課されていると語った。