ヘイリー氏が地元で敗北、サウスカロライナ州予備選の出口調査から分かること
(CNN) 前サウスカロライナ州知事のニッキー・ヘイリー氏は地元で行われる大統領選予備選挙で、自分のほうが大統領にふさわしく、11月の本選でも勝算が高いと有権者にアピールした。だがCNNが24日に同州の共和党予備選挙で行った出口調査の結果をみると、そうしたアピールは「MAGA(米国を再び偉大に)」を支持する保守派有権者の心をつかむことはできなかったようだ。CNNの予測によれば、ドナルド・トランプ前大統領は同州予備選挙で当選を確実なものにし、連勝記録を更新するとみられる。
出口調査では投票者の4分の3以上が年明け前からすでに候補者を絞り込んでいたと回答。その圧倒的大多数がトランプ氏の支持者だった。対照的に、1月の段階で決めかねていた人、あるいはごく最近になって決心がついたという一部の人々のうち、過半数をごくわずかに上回る人数がヘイリー氏に傾いた。
サウスカロライナ州共和党予備選挙の有権者層は、ニューハンプシャー州予備選挙よりも1月のアイオワ党員集会によく似ている。サウスカロライナ州予備選挙の投票者の約10人に4人が自称MAGA運動の一員で、2020年の大統領選挙でジョー・バイデン氏が正当な勝者だと認める有権者はわずか3分の1余りにすぎなかった。アイオワ州でも同じような数字だったが、ニューハンプシャー州では若干多く、予備選挙に投票した半数近くがバイデン氏の当選を認めていた。サウスカロライナ州の予備選挙では、トランプ氏が有罪判決を受けた場合、大統領にはふさわしくないと回答した投票者はわずか36%程度だった。
サウスカロライナ州予備選挙に投票した人の70%近くは共和党員で、約80%が保守派、約40%が超保守派を自認した。超保守派の80%以上、多少なりとも保守的だという人々の過半数弱がトランプ氏を支持した一方で、ヘイリー氏は少数の中道派から支持を集めた。選挙戦を通して見られていた傾向だが、出口調査でもやはり学歴の差がはっきり表れた。大卒有権者の得票率はトランプ氏とヘイリー氏でほぼ五分五分だったが、サウスカロライナ州の共和党有権者の大部分を占める高卒以下の有権者の得票率ではトランプ氏が4分の3を占めた。
予備選挙に投票した約60%が白人のキリスト教福音派で、アイオワ州やニューハンプシャー州よりもずっと多い。サウスカロライナ州では白人のキリスト教福音派の約75%がトランプ氏に投票した。それ以外のグループではトランプ氏とヘイリー氏の得票率はほぼ五分五分だった。16年大統領選のサウスカロライナ州共和党予備選挙とはだいぶ様相が変わっている。当時トランプ氏の得票率は、白人の福音派がその他有権者を数ポイント上回る程度だった。
出口調査は貴重な手段で、予備選に投票した人々の人口動態や政治思考を理解するのに役に立つ。すべての調査に言えることだが、出口調査は有権者を示す正確な尺度ではなく、あくまで推測にすぎない。とくに出口調査の暫定結果では十分な重みづけが行われていないため予備選挙の最終結果とは一致しないのが普通だ。だが出口調査の結果から、どういう人々が投票所に足を運んだのか、どのような角度から政治情勢をとらえているかを垣間見ることができる。
サウスカロライナ州の共和党予備選挙に投票した人々の大半は、誰が共和党候補に選出されようとも11月の本選で勝てる可能性があると考えている。仮にトランプ氏が選出された場合、投票者の約80%が多少なりともバイデン氏に勝てる公算があると回答した。だがトランプ氏が11月の本選で確実にバイデン氏に勝てると回答したのが約6割だったのに対し、ヘイリー氏の勝利を確信しているのはわずか25%前後だった。
予備選挙で投票した約3人に1人は、ヘイリー氏、トランプ氏ともに大統領職をつつがなくこなす上で必要な心身の健康を備えていると回答。トランプ氏だけという回答は約35%で、ヘイリー氏だけという回答は約30%だった。また投票者の3分の2前後が、トランプ氏のほうがヘイリー氏よりも国境問題および経済問題に上手く対処できると思うと回答した。もちろんこうした数字は質問内容にかかわらず、有権者の投票思考をある程度反映するものではあるが、同時にトランプ氏が同州で圧倒的優位を誇っていたことや、さまざまな手段で攻撃しているにもかかわらずヘイリー氏が支持集めに苦戦していたことがうかがえる。
出口調査ではトランプ氏とヘイリー氏が支持者に発信するメッセージの違いもはっきりと浮かび上がった。サウスカロラナ州でトランプ氏に投票した人々のうち、約半数は自分たちのために戦う候補者をもっとも望んでいると回答。共通の価値観を持つ候補者を望む声は約3分の1で、さらに候補者の気質やバイデン氏に勝てるかを重視する人々はごくわずかだった。対照的に、ヘイリー氏に投票した人々がもっとも重要視していたのが候補者の気質で、次が共通の価値観だった。
トランプ氏に投票した人々はほぼ全員、対立候補への反対票ではなく、同氏への支持が主な理由だと回答した。ヘイリー氏に投票した人々もほとんどが同氏への支持を主な理由に挙げたが、過半数には満たないものの約40%の人々が、トランプ氏への反対票だと回答した。サウスカロライナ州では民主党の予備選挙で投票しなかった登録有権者は共和党の予備選挙に投票が可能だが、出口調査で民主党員を自認していた有権者はわずか5%程度だった。
国政に対する意見も、同州ではトランプ氏とヘイリー氏の支持者でまったく異なる。トランプ氏に投票した人は、ヘイリー氏に投票した人よりも、移民問題が最大の争点だとする可能性が約30ポイント高い。トランプ氏に投票した人々の約80%は不法移民の大半を国外退去すべきだと回答し、ヘイリー氏支持者で同じ回答をした人の倍近くにのぼる。サウスカロライナ州でトランプ氏に投票した人々の3分の2近くが、全国レベルで中絶を全面禁止、またはおおむね禁止することに賛同しているのに対し、ヘイリー氏に投票した人々の約3分の2はこれに反対している。
サウスカロライナ州の共和党予備選挙に投票した有権者全体でみると、約40%が移民問題を最大の争点として挙げた。経済問題を争点として挙げたのは約3分の1、外交政策または中絶問題を挙げた人はごくわずかだった。90%近くが国の現状に不満を抱えており、40%以上が怒りを覚えている。経済状況が良好だと回答したのはわずか6人に1人。だが家計の状況については約80%が良好、またはどちらとも言えないと回答した。約60%は安定した家計状況が続いていると答えた。
サウスカロライナ州での共和党予備選挙の出口調査は、「ナショナル・エレクション・プール(NEP)」に代わってエジソン・リサーチ社が実施した。共和党予備選挙の当日、40カ所の投票所で2126人に取材した。全数調査の結果の誤差はプラスマイナス4.0ポイント。細分類した集団での誤差はさらに大きくなる。