米財務省、AI活用で小切手詐欺の被害額1500億円相当の回収に成功
ニューヨーク(CNN) 米財務省が膨大な量のデータを精査し、2024会計年度だけで小切手詐欺によって奪われた10億ドル(約1500億円)相当を回収するのに人工知能(AI)が役立ったことが分かった。CNNが入手した新たな推計で明らかになった。これは、財務省が前年度に回収した金額のほぼ3倍に当たる。
財務省は、機械学習AIが24年度に全体として40億ドル以上の詐欺を防ぎ、回収するのに役立ったと評価している。この金額は前年の6倍に相当する。
米当局は、多くの銀行やクレジットカード会社が犯罪を阻止するためにすでに行っている方法を参考に、22年後半からひそかに金融犯罪の検出にAIを使用し始めた。
目標は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)下で連邦政府が消費者や企業への緊急支援金の支給に奔走するなか急増した詐欺から納税者の資金を守ることだ。
財務省は、画像を生成したり、複雑な質問に答えたりする生成AIを使用していない。
代わりに、同省の詐欺検出の取り組みは、膨大な量のデータを分析し、学習した内容に基づいて決定や予測を行うことに優れたAIのサブセットである機械学習を活用している。
AIは、ほぼ無限のデータストリームをくまなく調べ、巧妙なパターンを検出することで、金融犯罪と戦うのに非常に役立つ可能性がある。専門家によると、高度なAIモデルをトレーニングすれば、わずか数ミリ秒で疑わしい取引をかぎ分けることができる。
これは、世界最大規模の支払機関の一つである財務省にとって特に重要だ。
財務省は毎年、1億人に14億件、約7兆ドル相当の支払いを行っている。支払いは社会保障費や連邦職員の給与、税金の還付など多岐にわたる。
そのため財務省は納税者から窃取しようとする詐欺師の主要な標的となっている。
調査会社ジュニパーリサーチの推定によると、オンライン決済詐欺は28年までに3620億ドルを超えると予想されている。
そして、その詐欺の一部はAI自体によって加速している。
香港警察によると今年初め、金融関係者がディープフェイク動画にだまされ、詐欺師に2500万ドルを支払った。
イエレン財務長官は6月、銀行関係者に対し、金融におけるAIは「重大なリスク」をもたらすと警告。昨年末にはAIを金融システムに対する「新たな脆弱(ぜいじゃく)性」に分類した。
財務省幹部は、AIシステムが疑わしい取引を検知する一方で、「人間が常に関与」し、詐欺かどうかの最終判断は連邦政府機関が行うと強調した。