元判事とその妻を逮捕、ギャングとの関連疑われる移民の証拠を改竄か 米ニューメキシコ州
(CNN) 米ニューメキシコ州ドーニャアナ郡の元下級判事とその妻が、適切な書類を持たない移民の逮捕に関する証拠を改竄(かいざん)した罪に問われている。当該の移民はベネズエラの凶悪なギャング組織「トレン・デ・アラグア」の構成員である疑いをもたれている。25日に提出された2件の刑事訴追状で明らかになった。
裁判所の記録によれば、証拠改竄の罪に問われているのは元郡下級判事のジョエル・カノ容疑者。妻のナンシー・カノ容疑者も証拠改竄を共謀した罪に問われている。CNNは両容疑者の弁護士にコメントを求めている。
改竄された証拠に絡む移民はベネズエラ国籍のクリスチャン・オルテガロペス被告で、裁判所の記録によると今年、銃器及び弾薬の違法所持で逮捕・起訴された。
米国土安全保障捜査局(HSI)は1月、匿名の情報を受けてオルテガロペス被告に対する捜査を立ち上げた。情報は同被告が適切な書類を持たない別の移民とカノ容疑者らの所有する同州ラスクルーセスの住宅に住んでいるとする内容で、銃器の携行にも言及していた。
ボンディ司法長官は25日、FOXニュースの取材に答え、移民が判事と暮らしているとする情報が当局に寄せられたと説明。書類に不備のある移民に判事が隠れ家を与えることを許してはならないと糾弾した。
オルテガロペス被告がフェイスブックに投稿した画像と動画には、ラスクルーセスの射撃場らしき場所で拳銃もしくはアサルトライフルを手にしているとみられる本人が登場するという。同被告に対する訴状で明らかになった。
捜査員らはオルテガロペス被告がネットに投稿した画像や動画から、トレン・デ・アラグアとの「関連が一般に認められる」タトゥーや衣服、手の動きを確認。同被告とギャング組織とを結びつける有力な証拠だとした。
トレン・デ・アラグアはベネズエラの刑務所で生まれたギャング組織で、現在は米国内で活動。米財務省外国資産管理室(OFAC)によると、かねて移民を対象にした人身売買などの犯罪、マネーロンダリング(資金洗浄)、麻薬の密売、誘拐、恐喝に関与している。
元判事のカノ容疑者はいかなる違法行為も強く否定し、オルテガロペス被告とその知人について、トレン・デ・アラグアとの関係が疑われることを事前に把握してはいなかったと主張する。また同被告らを自身の所有する住宅に滞在させた判断も擁護している。CNN提携局のKOATがニューメキシコ州最高裁に提出された書簡を引用して伝えた。
2月28日、2通の捜索令状が執行され、最終的にオルテガロペス被告が逮捕、起訴された。捜査員はカノ容疑者の自宅でオルテガロペス被告の所有する携帯電話3個を発見。別の住居でも捜索の結果、銃器4丁が見つかった。
捜索の過程でオルテガロペス被告がもう1個携帯電話を持っていると考えた捜査官らは今月24日、カノ容疑者の自宅の捜索令状を執行。この捜索の最中、ジョエル・カノ容疑者は捜査員に対し、オルテガロペス被告の携帯電話をハンマーで破壊したと明らかにした。携帯電話の中に、銃器を構えた姿など同被告にとって不利になるとみられる画像や動画が含まれていると考えたからだという。

元々オルテガロペス被告がフェイスブックに投稿し、ニューメキシコ州連邦地裁が公開した写真。銃弾を握る手が写っている/US District Court for the District of New Mexico
CNNはこの件に関する詳細な情報を得るため、移民税関捜査局(ICE)と司法長官の事務所に連絡を取った。
裁判所の文書によると、妻と共に逮捕される前の3月、ジョエル・カノ容疑者は郡の下級判事の職を辞していた。今月22日、ニューメキシコ州最高裁は同容疑者に対し、今後州内の裁判所の職に就かないよう命じた。