アイルランド高裁、脳死妊婦の生命維持装置取り外しを容認
(CNN) アイルランドで、妊娠18週の脳死状態の女性の家族が女性の生命維持装置の取り外しを求めている裁判で、高裁は26日、胎児が無事に生まれる「合理的見通しはない」とし、女性の生命維持装置を取り外してもよいとする判決を下した。
女性の家族は、延命治療の中止と女性の尊厳死を望んでいたが、医師らは胎児の生存の権利が侵害されると懸念し、生命維持装置の取り外しを拒んでいた。
アイルランド憲法は、胎児にも母親と同様の生存の権利を認めている。また同国では、母親の生命に医学的合併症や自殺の恐れなど「現実かつ実質的危険」がない限り、妊娠中絶は違法とされている。
女性は、深刻な脳の損傷を受けた後、脳死を宣告され、12月3日に生命維持装置にかけられた。女性は20代で、すでに2人の子どもの母親だ。
高裁の3人の判事で構成される審判団は26日、示された医学的証拠から、子どもが無事に生まれる可能性は事実上ないに等しいと判断し、女性の生命維持装置の取り外しを容認する判決を下した。
判決を読み上げた高裁のニコラス・カーンズ判事は「現在、母親に行われている延命治療の維持・継続は、彼女から死の尊厳を奪う行為だ。医師団が法的責任を問われる恐れがあるとの理由だけで開始した無益な延命行為により、彼女の父、配偶者、幼い子どもたちは想像を絶する苦悩を味わうことになる」と指摘。「高度な経験を有する医師は、ほぼ奇怪ともいえる処置を続ける医学的、倫理的根拠を見いだすことはない」とした上で、「本件では延命行為の中止は医師団の裁量に委ねられる」と述べた。