願いは「平和」 トルコの港町に殺到するシリア難民
彼らの中に身元を明かす者はいない。シリアに残してきた親族が報復を受けることを恐れているのだ。
法に違反し、子どもたちの命を危険にさらしてまで海を渡ろうとするのはなぜか。そう質問すると、息子と娘を連れた隣の男性がこう答えた。「シリアにいたら、とっくに死んでいるからだ」
ギリシャ行きの密航費用は一律1300ドル(約15万6000円)とされる。業者のボートは白昼に出発することもある。
現地のジャーナリストが先月末に撮影した映像には、救命胴衣を着け、浮輪を持った30人以上の集団が黒いゴムボートに乗り込む場面が映っていた。4人のトルコ人男性がボートを沖へ押し出す。しばらくして、ボートを操縦していた上半身裸のトルコ人男性が「わかったか?わかったか?」と繰り返す声が聞こえた。
男性はその後、海に飛び込んで岸へ戻り始めた。残された集団は操縦の仕方が分からないらしく、ボートはしばらくその場で円を描いた。海岸の密航業者たちから罵声(ばせい)が飛ぶ。